『「ディズニープラス」契約者は訴え起こせず、不法死亡訴訟でディズニー側が主張』など報じられているが、そもそも英語が理解不能。

 昨年10月にディズニー・スプリングスのレストランで食事をした女性がアレルギーによるアナフィラキシーショックにより亡くなりました。レストランで食べた食材に含まれていたアロゲン(乳製品とナッツ)が原因のようです。

 夫はニューヨークの医師で、妻の死後、レストラン運営会社とディズニーを訴え、損害賠償を求めます。

 話しはそれだけのことなのですが、これをCNNが報じると訳が分からないことになる。

 CNNの前に、他のメディアがどう報じているのか調べてみました。すると、こちらも意味不明です。

 下の記事は「npr」というニュースサイトの「Disney wants a wrongful death lawsuit thrown out because the plaintiff had Disney+」(ディズニーは、原告がDisney+を持っていたため、不法死亡訴訟を却下してほしいと望んでいる)という記事です。

 この記事の下にある赤枠で囲んだ部分が意味不明な英語になっています。

 この文章を読んで、死んだのは誰? と聞かれたら、100%の人がニューヨークの男性医師と答えると思います。

 英語のニュアンスの違いもあるので、Copilotに聞いてみます。

ネコ師
ネコ師

和訳して。「The husband of a New York doctor who died shortly after dining at a Disney Springs restaurant last year has accused Walt Disney Parks and Resorts of negligence in a lawsuit. Disney has responded with a motion to compel arbitration rather than litigate in court. 」

Copilot
Copilot

もちろんです。以下が和訳です。

「昨年、ディズニー・スプリングスのレストランで食事をした直後に亡くなったニューヨークの医師の夫が、ウォルト・ディズニー・パークス・アンド・リゾーツを過失で訴えました。ディズニーは、裁判ではなく仲裁を強制する動議で応じました。」

ネコ師
ネコ師

この文章で、亡くなったのは誰ですか

Copilot
Copilot

この文章では、亡くなったのは「ニューヨークの医師」です。具体的には、ディズニー・スプリングスのレストランで食事をした直後に亡くなった医師のことを指しています。

ネコ師
ネコ師

でも、事実は違います。亡くなったのはこの医師の妻です。訴えているのはこの医師です。この英文がおかしいと言うことですか。

なるほど、事実が異なるのですね。確かに、英文では「ニューヨークの医師の夫が訴えた」とありますが、実際には「ニューヨークの医師が亡くなった妻のために訴えた」ということですね。

この場合、英文の表現が誤解を招く可能性があります。正確な表現にするためには、次のように修正するのが良いかもしれません:

「The New York doctor, whose wife died shortly after dining at a Disney Springs restaurant last year, has accused Walt Disney Parks and Resorts of negligence in a lawsuit. Disney has responded with a motion to compel arbitration rather than litigate in court.」

 

なぜ、こんなことをしつこく書いているのかというと、CNNジャパンの記事も意味不明だからです。

CNNの記事

2024年8月15日、CNN.co.jpが『「ディズニープラス」契約者は訴え起こせず、不法死亡訴訟でディズニー側が主張』という記事を配信しました。

 この記事の中で、「原告は、ニューヨークの医師だった妻を亡くしたジェフリー・ピッコロさん。妻は2023年10月にウォルト・ディズニー・ワールド内の飲食店で食事した後、激しいアレルギー反応を起こして死亡した。」とありますが、これはおかしいのではないかと思います。夫のジェフリー・ピッコロさんはニューヨークの医師のようですが、妻も医師だったのでしょうか。CNN.co.jpは妻も医師だとはっきりと明記しています。

 ところが、本家のCNNの記事には、一言もそんなことは書かれていません。つまり、CNN.co.jpのライターがねつ造した記述ということです。・・・、と思っていたら、他のサイトで「元ニューヨーク大学の医師である妻」という記述を見つけました。ややっこしい!

 その下の「ディズニーと飲食店側に過失があったとして、5万ドル(約740万円)の損害賠償を求めている。」の部分もおかしい。たった5万ドルの賠償に裁判? 読者をミスリードする記述になっています。原文では、

Piccolo is seeking damages in excess of $50,000 pursuant to Florida’s Wrongful Death Act, as well as damages for mental pain and suffering, loss of companionship and protection, loss of income and medical and funeral expenses. (CNN)

「ピッコロは、フロリダ州の不法死亡法に基づき、50,000ドルを超える損害賠償を求めており、さらに精神的苦痛や苦しみ、友情や保護の喪失、収入の喪失、医療費および葬儀費用の損害賠償も求めています。

 となっています。つまり、法律で決まっている5万ドルなどのはした金ではなく、慰謝料を取るのが狙いのようです。そして、その相手は、事件を引き起こした原因企業・レストランだけではなく、ディズニー本社を訴訟の対象としているところがなかなか米国らしい。ディズニーとレストランとは無関係の会社です。

 いったん裁判に発展すると莫大な裁判費用がかかることから、ディズニー側は原告である夫が「ディズニープラス」に加入していたことから、その約款を根拠に、原告は裁判を起こすことができず、仲裁による解決を図る必要があると主張しているようです。

 日本人がこの記事を見て理解できないのは、そもそも、亡くなった女性が乳製品とナッツに対する重度のアレルギー体質であるにも関わらず、なぜ、外食したのかが分からないことです。日本食なら、この食材を使うことはほとんどないと思いますが、米国では無理でしょう。レストランを信用して自分の命をかけて食べた。その結果がアナフィラキシーショックで死亡では目も当てられません。何を根拠に、レストランの説明を信じたのでしょうか。とても不思議です。

 次に、記事ではディズニー・スプリングスのラグラン・ロード・アイリッシュ・パブ、つまり、原因企業についての記述がありません。このレストランがアロゲンを含む食材を料理として出したのがそもそもの原因です。ウエイターやシェフにアロゲンがないことを何度も確認したと原告側が主張していますが、それに対するレストラン側の回答は何も書かれていません。

 結局、この記事は、ディズニーが「ディズニープラス」を根拠に仲裁に持ち込もうとしていることを批判することを目的として書かれているようです。まるで原告側弁護士の思惑通りの記事になっています。

 そもそもディズニーは、レストランとは無関係で、訴えられる覚えがない。駅地下のレストランで食中毒にかかった患者がJRを訴えるようなものです。

 この記事が奇妙だと感じることをまとめると、次のようになります。

 ・亡くなった女性が外食したことが奇妙。(夫が医師なのに、ビーガン食とアナフィラキシーショック患者のアロゲンを同じレベルで見ているように感じる。亡くなった妻が医師であるのならあまりにもずさん。彼女はオニオンリングを食べたようですが、その油はナッツを含む食材を揚げた油だったのでは?)
 ・原因企業であるレストランの話しが一切出てこないことが奇妙。
 ・ディズニー側が「ディズニープラス」に加入したら裁判を起こせないと主張することが奇妙。

 そして、最も奇妙なのが、CNN.co.jpの記事が原典をいい加減に省略して意味不明な記事を書いていることでしょう。

 だから、記事を読んでも、日本人には理解できない、とても奇妙なお話になっています。

 フロリダのウォルト・ディズニー・ワールドには合計で10日くらい滞在したことがありますが、あまりにも広すぎてよく分からない。まず、エプコットセンターを探し、そこからいろいろ探してみたのですが、中毒事故のあったパブを見つけることはできませんでした。

 いずれにしろ、ディズニープラスは登録してはいけないことが分かりました。もしかして、アマゾン・プライムにも同じ条文があるのでは?

問題の約款

 問題となっているのが「Disney Terms of Use」の第8条の記述です。

 この規約を盾に、裁判を起こせないと主張されても困ります。利用者はどう対処したらよいのでしょうか。ディズニーランドとは関わらない。これが最良の選択かも。

 米国ディズニーと日本のディズニーは別会社だと主張しても意味がありません。同じ規約を使っているのですから、同じ狢(むじな)です。

 そして、規約の冒頭にある一文が重要になります。

「Disneyサービスをご利用になる前に、本規約並びに特定又は補足の規約をよくお読みください。本規約は、お客様によるDisneyサービスの使用全般について規定するものです。Disneyサービスをご利用になることで、本利用規約並びに特定又は補足の規約に同意されたものとみなされます。なお、本規約は、ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社が日本向けのみに提供するDisneyサービスが対象であり、当社が、アメリカ合衆国及び日本に限らないその他複数地域を対象として提供するグローバルなDisneyサービス(MyDisney(マイディズニー)アカウントの管理を含むがこれに限定されない)で、本規約の対象にならない場合は、「ディズニー利用規約 - 米国」が適用されます。

 ここで言う「当社」とはいったいどの会社なのでしょうか。オリエンタルランドでしょうか、それともディズニー本社なのでしょうか。

 ディズニーサービスを利用すると集団訴訟ができないことを強いる規約になっています。怖いですねぇー。何これ!の世界です。