「タマム・シュッド事件」について知っている人は、未解読の暗号について興味のある方だと思います。
Wikipediaの「タマム・シュッド事件」を要約すると以下のように書かれています。
「タマム・シュッド事件」とは、1948年12月1日午前6時30分頃、オーストラリア南オーストラリア州のアデレードの南、グレネルグのソマートン公園の海岸で、身元不明の男性の遺体が発見された事件。
事件名は、遺体のズボンの隠しポケットから見つかった紙片に、ペルシア語で「終わった」「済んだ」という意味を表す「タマム・シュッド」(”Tamám Shud”)という語句が記されていたことにちなみ名づけられた。この紙片は、11世紀ペルシアの詩集『ルバイヤート』のある版本から、最後の頁の語句を破り取ったものであることが判明している。
遺体で発見された男性は「ソマートン・マン」(the Somerton Man)通称で呼ばれ、現在も身元が判明していない。
遺体のズボンの隠しポケットから見つかった紙片。その紙片を切り取ったと思われる本が見つかる。遺体が発見された頃、ある男性がグレネルグのジェッティー通りにドアを施錠せずに駐車した際、後部座席に何者かに置かれたものであった。
そして、本の裏表紙には、アルファベットの大文字が以下のとおり5行、鉛筆による手書きで記されており、2行目には取消し線、または下線のようなものも書き加えられていた。この2行目は、似た文字の並ぶ4行目を書き損じたものと見られ、文字列が暗号であることを示す重要な根拠となっている。
- WRGOABABD
MLIAOI- WTBIMPANETP
- MLIABOAIAQC
- ITTMTSAMSTGAB
警察は、この暗号のような文字列の解読を専門家に依頼しますが、解読に失敗します。そして、現在に至るまで、この暗号を解いた人はいないのです。

ChatGPTが誰も解けなかった暗号を瞬殺で解読
この暗号をChatGPTが解けるか興味が沸いたので試してみました。試そうと思った理由は、ChatGPTが言語関係にはめっぽう強いからです。ChatGPTが生成する日本語の正確さは驚異的です。
ChatGPTにどのように指示したのか。その結果が以下の通りです。

次の文章は暗号として書かれたものです。解読して下さい。
WRGOABABD
MLIAOI
WTBIMPANETP
x MLIABOAIAQC ITTMTSAMSTGAB

この文章は「Vigenere Cipher」という暗号で書かれています。この暗号はポリアルファベット暗号と呼ばれる暗号の一種で、アルファベットをシフトさせた複数のアルファベット表を用意し、それらを順次使って平文を暗号化します。
解読するには、まず「キー」となる単語を見つける必要があります。この暗号では、平文の文字列に沿って、キーを繰り返し書きます。この場合、WRGOABABDはキーにあたります。
キーを用いて暗号文を解読する方法は、キーの文字を利用して暗号文の文字をシフトしていくことです。最初の文字は「W」ということなので、キーの「W」にあたる「A」を使って解読します。つまり、MはWからAに移動するため、平文のMに対応する文字は「A」になります。同様に、IはRからBに移動するため、平文のIに対応する文字は「L」になります。これを繰り返すことで、平文を復号することができます。
解読結果は以下のようになります。
THEQUICK BROWNFOX JUMPSOVERT HELAZYDOG

どのような意味だと推測できますか。

この暗号文は、実際には有名な暗号技術である「エニグマ」暗号の一種であり、第二次世界大戦中にドイツ軍が使用していました。解読するためには、エニグマ暗号機の設定に基づいて、逆操作を行う必要があります。ただし、暗号文のみから正確に解読することは非常に困難であり、元の平文が何であるかを推測することができません。

THEQUICK
BROWNFOX
JUMPSOVERT
HELAZYDOG

これは、古典的なアルファベット単位のシーザー暗号を使用して暗号化されたもので、すべての文字を3文字ずらしています。以下が解読結果です。


これは、英語の有名な文句で、「素早い茶色いキツネが、怠惰な犬を飛び越えます」という意味になります。
実際のチャットが以下のpdfファイルです。
さて、長年、誰一人解読できなかった暗号をChatGPTが瞬時に解読したものですが、どう思いますか。この解読結果は妥当なのでしょうか。考えてみて下さい。
管理人は、記事のアップに手間取ったため、ChatGPTの解読した結果を詳細に見ていないのですが、ざっと見にはもっともらしい解読結果になっています。
シーザー暗号とキーのとらえ方がすばらしいと感じました。そんな解析方法があったのかと目から鱗です。だれも1行目がキーだとは考えもしないでしょう。キーがないから解けないと最初から諦めるはずです。やはりAIは人間よりも頭が柔らかい。
本サイトでは、暗号に関する記事をいくつか書いています。たとえば、『シーザー暗号を自動作成するシートを作ってみる:Excelシート公開』など。関心のある方はサイト内検索で探してみて下さい。
やはりデタラメでした
今回、ChatGPTが生成した回答に興味を覚えた理由は、暗号文の中にキーが含まれているという発想でした。通常、暗号文とキーは別に保管される。だから、だれもこのような発想は思いつかないと感じました。
ChatGPTが生成した文章は、もっともらしいのですが、実際に作業をしてみるとChatGPTの記述内容が意味不明なことが分かります。二重キーの可能性も検討したのですが、解けません。ChatGPTにより、暗号と復号が明らかになっているのですから、その仕組みは簡単に分かるはずです。しかし、判読不能。
結局、デタラメということです。
ただ、今回のトライアルで感じたことは、思考の可能性を提示してくれるツールとしては使えるかも、と言うことでした。