宇宙人が映り込んだとされる少女の写真の謎は解決しているんだ!?

UFOやオカルト好きの人じゃなくとも下の写真は見たことがあるのではないでしょうか。


PHOTO SOURCE: WIKIPEDIA、ソルウェイ・ファース・スペースマン(SolwayfirthSpaceman)

少女を撮影したスナップ写真に宇宙服を着た宇宙人が偶然映り込んだ、とされる写真です。

古くからあるこの手のUFO・宇宙人写真は注意が必要で、ネット上にあるパクリ記事は当てになりません。手垢まみれの情報は、結局、真実からは一番遠くに位置していると感じます。

この写真の謎は解明されているのだろうか? これが今回の記事の主題です。

写真の出所は

このタイプの写真は、たいてい出所不明で、写真の多くはロシアサイトに掲載されているという特徴があります。ロシアの職人さんたちが作ったフェイク写真です。

ところがこの写真は違うようです。撮影者も映っている少女も撮影場所も撮影日さえも分かっています。つまり、この写真は修正を加えたフェイク画像ではなく、正真正銘の本物の写真だということです。

1964年5月24日、イギリス中部ソルウェー湾(Solway Firth)で撮影された写真。撮影者は、当時、消防士をしていたジム・テンプルトン(Jim Templeton:13 February 1920 – 27 November 2011 享年92).

まずは撮影場所から見ていきましょう。

撮影場所は、ソルウェー湾に望む バーフ・バイ・サンズ(Burgh by Sands) という古城の近くです。

St Michael's Church, Burgh by Sands - geograph.org.uk - 351846.jpg
By Alexander P Kapp, CC BY-SA 2.0, Link

写真の撮影者であるジムは、近くの町カーライル( Carlisle)に住んでおり、1964年当時、39歳でした。

この日、妻アニーと5歳の娘エリザベスと共に、この地を日帰りで訪れたようです。

ここで、管理人はあることに気づきます。写真の少女エリザベスの母親の名前は「アニー」。イギリス中部。写真はコダックのフィルム。

このパターンはどこかであったような。

そうなのです。以前アップした妖精写真と設定が似ています。関心のある方は過去記事「コティングリー妖精写真の謎を追う!」をご覧下さい。

イギリスが情報の発信源となっている記事には注意が必要です。労働者階級を対象としたタブロイド紙SUNがあるからです。このタブロイド紙は、日本の雑誌「ムー」のようなオカルト記事を平気で垂れ流すタブロイド紙で、情報の出典が「SUN」になっていたら、貴族階級が大半を占める日本人は信じてはいけません。なにしろ、日本は「みんなで大家さん」なので、隣人も親友も、そして他人もみんな大家さん。借り手がいるかなどと疑問を呈すると村八分にされてしまいます(笑)。

最新の結論はこんな感じ

この謎の写真の結論は、エリザベスの母親アニーが映り込んだ、というもの。

なぜ、撮影者である夫のジムがそれに気づかなかったのかというと、当時のカメラのファインダーは、実際に写真プリントした場合の7割程度しか見えておらず、ファインダーを覗いて撮影しているジムには、背後に立っている妻アニーがまったく見えていなかった。

でも、少女の背後にいる物体はとても母親には見えません。

実際、コントラストを下げると、アニーの着ていたノースリーブのワンピースが浮かび上がる。太陽光により露出オーバーのために母親が着ている青いワンピースが白飛びしたため、白く映り込んだようです。

嘘つきだらけの世界にうんざり

このような説を信じている人も多いようです。問題は解決され、謎などないと。

ところがこれはフェイクなのです。

白飛びしている画像に対し、Photoshopで上のような調整・修正はできません。白に対し色が乗らないのです。

上の画像は、誰かが腕の部分を着色したフェイク画像です。

頭部の説明をしていない

問題となるのは「頭部」。まるでヘルメットをかぶったような宇宙人とされている被写体がアニーだとするのなら、それを分かるように説明すべきです。しかし、それができない(笑)。

腕の部分を着色する技術があるのなら頭部の画像修復など簡単でしょうに、その説明はありません。上の写真は誰かがPhotoshopで処理するとこのようにアニーであることが分かります、とねつ造した画像です。読者をバカにするとても悪質な行為です。何が悪質かというと、Photoshopなら画像を調整し、アニーの服装が見えるというニセの画像を作っていることです。Photoshopを使い慣れていない人にはこんなことができるんだ、と間違った情報を提供していることがきわめて悪質なのです。白飛び画像に対しPhotoshopではこのような修復はできません。コントラストを落としても色飛びしている白は白いままです。

宇宙人とされる被写体は、腕の形状から向こうを向いているのが分かります。すると、映っているのは後頭部です。

アニーの髪型はミディアムです。写真のように後頭部が映るには、スカーフか何か、何らかのツールが必要となります。しかし、それが分からない。

上の写真でノースリーブ姿のアニーが花を摘んでいるシーンがあります。娘のエリザベスが手に持っている花束は、二枚の写真でほとんど同じです。ということは、この二枚の写真は時間をおかずに撮影されたものだと考えられます。

従って、アニーがパーカーなどを着込んだとは考えにくいのです。つまり、アニーは、花を摘んでいる衣装のまま、問題の写真に写り込んだと考えられます。

だから、宇宙人のヘルメットのように見える理由の説明が必要なわけです。この説明なくして、謎が解明されたとは言えません。亡きジムも同じ考えだと思います。

肩の辺り、背中の上部にパーカーのようなラインが見えます。しかし、問題の写真と同時期に撮影された写真では、アニーはパーカーなど着ていません。

本人に聞けばいいのに。

撮影時、周辺には誰もおらず、車に乗った老夫婦がいただけだったそうです。すると周囲には、撮影者のジム、被写体である娘エリザベス、その他には母親のアニーしかいません。映っているのはアニーと考えるのがあまりにも自然なこと。

このアニーの服装、髪型の確認をやらないからこそ、ミステリーを維持できる(笑)。

この当たり前のことを調べもせずに、宇宙人説を調べることに多くの時間を割いたオカルト愛好家が世界中にたくさんいるようです。典型的な彼らの主張パターン。本人に聞けばいいのに聞かずに膨大な時間を費やして宇宙人説との関連づけとなるネタを探す。事実を確認できる当事者が亡くなれば、大々的に自説の論陣を張る。

これは、シチリアのカタコンベに埋葬されている100年前の朽ちない少女のミイラと同じパターンです。過去記事「100年前に亡くなった少女の朽ちない遺体の謎は解かれているらしい」参照。

この少女のミイラについても、遺族は亡くなりどのようにエンバーミングが施されたのか謎とされていましたが、これも真っ赤な嘘でした。少女ロザリア・ロンバルドの父親はつい最近、1980年まで生きていたのです。父親に聞けばいいのに!

父親がインタビューに応じなかったとかいう記録はありません。だれも調べず、不思議だ不思議だと騒いでいただけです。

イギリスのミステリーには食傷気味です。
イタリアのミステリーも食傷気味です。
アメリカのミステリーはお話にならないレベルです。

日本のミステリーが面白いのは、登場人物が本当のことを言っているのか直ぐに分かるから。

アメリカの警官の証言などを根拠に推論を組み立てるのは無謀ですが、日本の警官の証言は信頼できます。その信頼を裏切った時の日本社会の彼に対する制裁を知っているから、彼の証言を信じます。

日本人は、同じ感覚で外国の警官の証言を信じる傾向にありますが、それは大きな間違いです。

昨日まで麻薬の売人だった男が、大統領選挙後には警官になっているという事例は中南米では当たり前のことです。政治家の選挙を応援すれば警官や公務員になれるし、かれらの収賄は日常茶飯事です。

結局、外国の公務員は、いつでも何度でも、コネ次第でなれるのに対し、日本の公務員には年齢制限があり、やめたら復職はできず、コネでの採用は無理。もし、採用の不正の疑いがあるとその不正を暴くのを生きがいにしている偏執狂の人たちがたくさんいます。

今回の謎を調べてみると、結局の所、撮影者であるジム・テンプルトンが問題人物のように感じます。

本来、撮影現場の周囲には家族しかいなかったわけで、写真に写っている謎の人物は妻のアニー以外考えられない。ジムはそう考えることもなく、写真を報道機関に流し騒ぎ立てることで、その後の人生を楽しんだのでしょう。

ここで注意すべきは、この謎で「悪意の登場人物」はいないということです。当事者にはまったく悪意はありません。センセーショナルに話題にしたのはマスコミです。

コティングリー妖精事件も同じような経過を辿っているように感じます。妖精写真をねつ造したとされるエルシーとフランシスにはまったく悪気はありません。これをセンセーショナルに取り上げたのがマスコミです。ねつ造疑惑の中、コナン・ドイルは、最後まで彼女たちを庇おうとします。その理由に関心のある方は過去記事をご覧下さい。

出典:
1) Wikipedia “Solway Firth Spaceman
2) angelismarriti.it,”WE ARE NOT ALONE: THE HIDDEN EVIDENCE OF THE SOLWAY FIRTH SPACEMAN (UK,1964)
3) BBC NEWS, “El misterio del “astronauta de Solway”, que apareció inexplicablemente en las fotos de una niña británica
4) “Photographer Comments On Cumberland Spaceman Picture” ジムによる投稿、アーカイブより
5) “Fim do mistério do astronauta de Solway