「シャーロック・ホームズの冒険」を観ていたらジェレミー・ブレットが突然声変わり|耳が変になった?

 2021年9月22日(水)、NHK BSプレミアムで「シャーロック・ホームズの冒険」 (7)「青い紅玉」が放映されました(The Adventures of Sherlock Holmes, The Blue Carbuncle)。

 もう、何度目の再放送かは知りませんが、何度も観た番組です。

 この番組は、1984年、英国グラナダTV製作のテレビドラマ[Sherlock Holmes (1984 TV series)]で、シャーロック役を ジェレミー・ブレット が、ワトソン役を デビッド・バーク が演じています。

 そして、シャーロックの声を露口茂さんが、ワトソンの声を長門裕之さんが演じています。

 さて、ここからが今日の本題。この番組を観ていたら耳がおかしくなった! です。

番組を観ていて感じた不気味さとは?

  この番組を観ていたら耳がおかしくなった!

 どういうことかというと、番組の途中で、シャーロック役の露口茂さんの声から、誰かしらない人の声に変わるのです。そして、ワトソンの声も同様に、長門裕之さんの声から別人の声に変わります。その時間は2分程度と短く、すぐに元に戻るのですが、聞いていて気味が悪い。この現象が起きるのは2箇所あり、合計でも5分足らずの短い時間です。気づかなかった人も多いのではないかと思います。

 この声が変わるのはドラマの最初の方です。ワトソンがホームズの部屋に入ってきて、手に持った新聞記事の事件を説明し、次のシーンに移る場面です。最初にワトソンの声が別人に変わります。

 具体的には、下のYouTube(英語版)で確認して下さい。この動画の 14:41 から2分間程度別人の声に変わります。NHK吹き替え版の話です。

 この番組について、NHKホームページには次のような記載がありました。吹き替えの吹き替えが行われたとは一言も書かれていません。 

ジェレミー・ブレットが演じたシャーロック・ホームズのドラマをBSPと4Kで放送!クリスマス間近のある日、酔っぱらいの男が落としたガチョウの中に入っていた物とは?

伯爵夫人が持つブルー・カーバンクルという見事な宝石が盗まれるが、逮捕された配管工は無罪を主張する。同じころ、ホームズのもとに知り合いのピーターソンが帽子とガチョウを持って来た。前の晩に酔っぱらいのけんかを止めようとした際、被害者が落としていったというのだ。ガチョウはクリスマスの食事用に持ち帰らせ、ホームズが帽子から持ち主を推理していると、慌ててピーターソンが駆け込んでくる。

NHKホームページ

原因は不適切な放送禁止用語の吹き替えの訂正か?

 ドラマの吹き替えの声が、突然別人に変わるという不気味な今回の現象。まさに「事件です!」。

 この日本語版台本を担当したのは翻訳家の額田やえ子さん(1927年12月13日 – 2002年4月9日)。もう、亡くなられています。

 ホームズ役の露口茂さんはご健在ですが、現在89歳とご高齢。長門裕之さんは2011年5月21日、77歳で亡くなられています。

 なぜ、吹き替えの変更が行われたのでしょうか。

Jeremy Brett as Sherlock Holmes – The Blue Carbuncle [HD]、14:41~

確認できない原因

 一度吹き替えをしたドラマの一部を再び吹き替えして修正するなど通常はあり得ません。もし、差別的表現など現代では問題視される用語が使われていたとしても、テロップで「作品のオリジナリティを尊重し、そのまま放送します」や「この番組は、オリジナルを尊重して放送します」などの断りが流されるのが一般的だと思います。それなのに、今回はわざわざ吹き替えをやり直しているのです。

  露口茂さんがご高齢のため、別の方に吹き替えをお願いしたらしいのですが、声質がまったく違うため、 ジェレミー・ブレット の声が、途中で声変わりするという珍事が発生し、とても不気味です。最初、耳がおかしくなったのかと思いました。

 さて、どのような用語が不適切で放送禁止用語にあたると判断されたのでしょうか。

 問題のシーンの会話は、特に差別用語が使われるような場面ではありません。 額田やえ子さんの台本でどのように書かれているのかわからないので、確認のしようもありません。青空文庫で問題のシーンを確認してみたのですが、やはり差別用語など不適切な言葉が使われるような場面ではありません。だから不思議なのです。

 もしかして、管理人の空耳?

なぜ気づかなかった? もう一つの可能性に!

 思い込みとは恐ろしいもの。疑問に感じたことが、思い込みにより消し去られてしまう。

 最初に感じたのは、なぜ、シャーロックとワトソンの二人の吹き替えを修正する必要があったのかという疑問でした。それが、アーカイブファイルの古い差別用語の修正、という考えに覆い尽くされ、この疑問が消えてしまいました。

 なぜ、二人の人物の吹き替えを同時にする必要があったのか。差別用語が使われていたとしても、どちらか一方の言葉のはずで、二人一緒に吹き替えする必要はどこにもありません。

 その必要が生じるのは、「尺が延びた」場合のみ。つまり、最初に公開した番組動画では、作品の一部をカットして、それに対し吹き替えをした。今回の動画では、カットせずにオリジナルのまま放映した。したがって、カットされていた部分に吹き替えが存在しない。このため、カットされていた部分の吹き替えを新たに作る必要が生じた。

 これが正解のようです。差別用語では、テロップを流せば済むこと。わざわざ、吹き替えの修正などしません。

シャーロック・ホームズの冒険 第7話 青い紅玉  10:59~

どこが追加されたのか確認する

 いよいよ本サイトの本領発揮です。

 今回放映された動画と以前放映された動画とでは何が違うのでしょうか。

 それがこれです。こんな時間のかかる作業は誰もやらない。だからこそ、本サイトでやります!

 黄色で着色している部分が今回放映で追加された部分です。別の言い方をすれば、最初に公開された当時、カットされていた部分ということです。ただし、この追加部分がいつの時点でなされたのかは確認できません。今回ではなく、かなり以前かも。

 この内容を見ると、シャーロック・ホームズファンは怒りを覚えると思います。とても重要な部分がカットされていたのです。

管理人はNHKの味方です!

 今回の記事を元に、アンチNHKの記事を書こうとするのであれば、管理人は一切の転載を認めません。勝手に記事を引用しないで頂きたい。

 管理人は、基本的にNHKが大好きです。何しろ、高額な受信料を支払っているので、視聴しないと損をします(笑)。

 今回の記事を書いていて感じたことは、最初にこのドラマをイギリスから購入した当時の担当者たちの視野の狭さです。今から37年くらい前のお話です。当時の担当者は、まさか、ドラマのカットした部分が復活するとは考えもしなかったことでしょう。

 この当時の担当者の狭視眼的でその場しのぎの発想により、現在の担当者は多大な苦労を強いられることになります。

 まずは、勝手に作品をカットしたという問題、吹き替えがカット済みの版で行われたこと、このため、全体版をDVDで販売する時、カットされた部分の吹き替えが必要となったこと。

 NHKは、今回の問題について何の説明もしていません。誰も気づく筈はないとたかをくくっているのでしょう。しかし、管理人のように、気づいてしまう人も中にはいます。やはり、説明をすべき事案だと感じます。

 何の説明もないことから、NHKの関心は、DVD発売にあるのだと想像できます。そもそも、イギリス制作ドラマがカットされていたなどNHK視聴者には寝耳に水です。

 それをこっそりカットなし版に戻したことで今回の問題が発生しました。

 本来であれば、フルバージョンで吹き替えを行った後でカットを行うべきでした。その責任・問題点すら明らかにされることもなく、管理人の支払った受信料が無駄に使われることになります。完全な手戻りです。

 その金額は数百万円、あるいは一千万円を超えるのかも知れません。

 DVD発売で元を取れるからいいや、という話ではありません。

 何ともしっくりしない結論ですが、このようなパターンがあるということを確認できただけ、よかった、ということにします。

 ところで、「歴史秘話ヒストリア」はいつ復活するの?