ミロのヴィーナスの腕があったらどんなポーズだったのだろう?

ミロのヴィーナス。知らない人はいないのではないかと思うほど有名な古代ギリシアの彫刻の女神像です。管理人はルーヴル美術館で本物を見たことがあります。

 ミロのヴィーナス像は、高さ203cmの大理石製。「ミロ」という名前は女神像の発見地ミロス島からきています。

 この像は、1820年4月8日に小作農であったヨルゴス・ケントロタス(Yorgos Kentrotas)によってオスマン帝国統治下のエーゲ海にあるミロス島で発見された。(Wikipedia)。

 以前、NHKで放映された『北川景子×地中海 女神たちを探して(後編)』でミロのヴィーナス像発見場所のロケをやっていました。案内人の高校教員コスタス・パパドプロスさんの説明では、ミロス島にキリスト教が入ってきたとき、ギリシャの彫像は破壊されたが、ミロのヴィーナス像は誰かが隠したために現在まで残っている。発見場所は洞窟で、その入口は岩や石で覆われていた。ヴィーナス像の周囲には欠落している両腕はなかったのだそうです。

 ミロのヴィーナス像って、ちょっと見ると美しい女性像なのですが、よく見ると突っ込みどころ満載の像のように感じます。

 世界中の皆さんも同じように感じているようです。

 まず特徴的なのが、「胸は二十代、腰は三十代、ヒップは四十代」という批評。誰もが納得する批評でしょう。

 これが、少し表現を変えるだけで問題が発生するから不思議。

 「バストは16歳、ウエストは四十台、ヒップは六十代」、と。

 身体の整形は古代ギリシャでもあったのでしょうか。

 管理人が違和感を覚えるのが首の太さです。頭に対して首が太すぎると感じます。レスリングでもやっていたのでしょうか。

見つからなかった両腕はどんなポーズだったのか

 ミロのヴィーナス像は有名なだけに、管理人が疑問に思った「見つからなかった両腕はどんなポーズだったのか」という問いを考えた人たちがたくさんいるようです。

 それは、「リンゴを左手で握り、右手で下半身をおおう衣をおさえている」という一般によく言われる説、「軍神アレスの盾をもっている」説、「水浴の最中、だれかが突然はいってきてびくっとする」説、などが挙げられます。

 この像の失われた両腕はどんなポーズだったのか。

 では、像をよく見てみましょう。

 まず、右手(腕)。右腕の付け根は、身体の前方に向いています。このような腕の付け根の状態になるには、腕はほぼまっすぐに伸びている必要があります。

 次に、左手(腕)。左腕の付け根は、水平になっています。この付け根の形状になるには、手先の位置が肩より上の場合が自然だろうと考えられます。

 人間の腕の動きは、肩関節、肘関節、手首の関節により規制されるため、肩の付け根の形状から、腕がどのようだったのかは想像可能かと思います。

 3D人形でつくってみるとこんな感じでしょうか。

失われた両腕を3Dプリンターで製作した義手

 2018年3月6日、パリで、腕のないギリシャ女神の像「ミロのヴィーナス」のレプリカに、3Dプリンターで製作した義手2本が贈られました。

 障害者支援の国際NGO「ハンディキャップ・インターナショナル(Handicap International)」が行っている3Dプリンター製義肢の使用促進キャンペーン「#BodyCantWait」(体は待てない)の一環。

 本物のミロのビーナス像を展示するルーブル美術館(Louvre Museum)前の地下鉄ルーブル(Louvre)駅に立つ、義手を装着されたレプリカは左手にリンゴを持っている。さらに、チュイルリー公園(Tuileries Garden)内にあるアレクサンドロス大王の像などパリ市内にある他の像にも義肢が装着されている。

 同キャンペーンではこれまでに、トーゴ、シリア、マダガスカルで計19人に3Dプリンター製の義肢を配布した。まもなくインドでも100人以上に義肢を提供する予定となっている。

 同NGOによれば、世界中で義肢を必要としている人口はおよそ1億人。樹脂を材料にした3Dプリンター製の義肢は従来の義肢よりも短時間で製作できるが通常、さらに高い費用がかかる。」
出典:(c)AFP

 その時の動画がこちら。YouTubeで閲覧して下さい。


 Source: YouTube: Charity equips ‘Venus de Milo’ with prosthetic arms

 これを観てどう思います?

 この映像の義手は、「リンゴを左手で握り、右手で下半身をおおう衣をおさえている」説に基づき作製しているようですが、この人たちって、義手の宣伝にミロのヴィーナス像を使っただけで、この像の両腕を復元するという考えは元からないようです。

 腕の付け根の形状から、このようなポーズはあり得ないことは、義手をつくっている過程で分かるはずなのに、こんな動画を配信している。

 最も重要な部分、つまり、身体にフィットする義手という視点を感じさせない動画になっています。

 左肩の義手は、この角度では装着ができない。


 Image: Wikipedia, ミロのヴィーナス。「1821年に描かれたミロのヴィーナスのスケッチ。失われる前の碑文の刻まれた台座部分が描かれている。」

 上の1821年に描かれたスケッチでは、当時の像は左腕の部分が現在よりも残っていたことが分かります。そして、左腕はほぼ水平に伸びています。

 すると、両腕があるミロのヴィーナスはたぶんこんな感じだったのではないかと思います。

 ミロのヴィーナス像は、競技場を見下ろす位置に設置されていたようです。たぶん、何体かあった彫像の一体なのでしょう。

 この彫像を洞窟に隠した人がいたということは、何体かあった彫像の中でもこの彫像が最も優れた出来映えだったのではないかと考えられます。

 ミロのヴィーナス。やはり魅力的です。首が太いけど・・・。

 

 こんな動画を作ってみました。