映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の中での印象的なシーンに、過去や未来が変わることで、写真に写っている人物が薄くなり、最後は消えてしまうというものがあります。
もし、写真に写っている人物が亡くなったとしたら、その人が写っている写真は、徐々に薄れていき、最後には消えてしまう。そんな妄想が浮かびました。
年月が経過する中で、故人の記憶は生きている人の記憶の中で風化し、失われていきます。
写真は亡くなった人の姿の記憶を現代につなぎ止める役割を果たしてきました。
しかし、古いアルバムを開いてみて思うことは、「この人、誰だっけ?」。写真に写っていても、それが誰なのか認識されず、忘れ去られる。
ふと、こんなことを考えて、つくってみたのが下の写真です。
有名なビートルズの「アビーロード」の写真。
ジョン・レノンは、1980年12月8日、ニューヨークの自宅アパート「ダコタ・ハウス」前においてファンを名乗る男性に撃たれ亡くなりました。40歳の若さでした。
ジョージ・ハリスンは、2001年11月29日、肺癌と脳腫瘍のため死去。58歳でした。
4人グループだったビートルズも、既に半分は鬼籍に入りました。アビーロードを横断する若かりし頃の4人の写真は、次第に人々の記憶から薄れていき、最後に残った写真は、アビーロードの横断歩道だけになる。
自分の古いアルバムの集合写真を見て、写っている人が誰なのか分からなくなってきている。
悲しいことですが、それが人間の記憶なのでしょう。
もし、写っている自分が分からなくなったら、かなり危ない状況かも知れません。
写真が撮影された当時であれば、写っている人の全員の氏名を言えたはずなのに、写っているのが誰なのか分からなくなる。
写真は残っているのに、これでは、存在しないのと同じこと。
今日は、そんなインスピレーションでビートルズの写真を加工してみました。
ビートルズはいつの時代でも人々の心に残っています。そんなことは当たり前のことです。今回の記事で書きたかったことは、一般論ではなく、写真を見る人にとっての心象風景についてです。
ビートルズの有名なこの写真も、すでに世間から忘れ去られているようです。その証拠に、Wikipediaの記述が、この写真のメンバーの並び順が意味不明な描き方をしていることでも分かります。
自分にとっての写真に写る人物に対する記憶は、年月を経て失われていきます。たくさんの思い出があったはずの小学校の集合写真。写っている生徒・先生全員の氏名を言うことができない自分に対して腹立たしくもあります。
過去の集合写真に対する心象写真、というジャンルがあってもよいのではないかと思い、今回の記事を書きました。