スエズ運河で座礁した巨大コンテナ船「エバーギブン(Ever Given)」は今どこを航行しているのか|最新話題に流されない!

2021年3月23日、スエズ運河で座礁した巨大コンテナ船エバーギブン号(Ever Given)が、3月29日午後、やっと離床し、スエズ運河が使えないという最悪の事態は何とか解消できたようです。

 一時は長期化が懸念されていましたが、コンテナ船は無事に正常な位置に戻れたようで、めでたしめでたしです。

 ところで、31日現在、エバーギブン号はどこにいるのでしょうか。

エバーギブン号は今どこにいる?

 ちょっと気になったので調べてみました。

 座礁座標:30.01814881097645, 32.5803558145989 (3月23日~)
 現在座標:30.35792, 32.38652 (3月31日)

 現在いるのがこの位置です。

 座礁位置と現在位置を Google Earth に表示すると次のようになります。

 この図を作ってみて、やっと座礁した場所と現在の位置関係を理解できました。

 座礁事故に関するメディアのニュースは山のようにあるのですが、どこで座礁したのかさっぱり分からない位置図が掲載されていて、管理人には理解できない。

 スエズ運河は、複線になっているところと単線の所があり、この単線の部分で座礁したのは分かったのですが、具体的にはどの位置なのか確認できませんでした。

船体に書かれている船名が違うけど

 事故を起こしたコンテナ船は、「エバーギブン(Ever Given)」です。

 ところが、船体には、「EverGreen」と書かれています。

 もしかして、これは触れてはいけない謎なのかも・・。 

今回の座礁事故は、スエズ運河管理者の責任なのでは

 スエズ運河って、誰が管理しているのだろう?

 スエズ運河は、イギリスの株式会社「スエズ運河会社」が造ったものです。1859年から1869年にかけて建設が行われ、1869年11月17日に正式に開通しました。

 明治政府の高官たちがヨーロッパに出張するときには、この運河を使いました。渋沢栄一がスエズ運河を通過するとき、この運河が政府の資金ではなく株式会社方式による民間の手で造られたと知り、その後の彼の考え方を大きく変えることになります。

 では、現在、スエズ運河は誰が管理しているのでしょうか。

 調べてみると、現在はエジプトの国営スエズ運河庁(SCA)によって運営・維持されているそうです。

 さて、今回の事故の原因。日本のメディアは、日本のことしか考えないとても視野の狭い報道をします。彼らの関心は、このコンテナ船の所有会社の社長が謝罪したかどうか。何とも情けない報道です。○○新聞の記者が犯罪を犯して逮捕されると、○○新聞のオーナーが謝罪する? 聞いたことがありません。自分の会社はやらないくせに、責任追及をしたフリをしているように感じます。

 今回の事故では、誰に責任があるのか。メディアの報道は、船長に責任がある可能性を報じています。

 しかし、これって変ですよね。高額な通行料を徴収している運河管理者スエズ運河庁に責任はないのか、とは誰も書きませんね。

 そもそも、運河を利用する船舶が安全に航行できるようにするのは、管理者の責任です。それが、座礁するなど、施設の管理者責任が問われるのではないでしょうか。

 確かに、船の責任者は船長です。しかし、運河の航行にはその施設独特のルールが決められており、船長であってもそのルールに従わざるを得ません。

 つまり、そのルールを運営管理するスエズ運河庁が全責任を負うことになります。

 今回の事故は、突風により、船の方向が傾いたというのが根本的な原因のようですが、問題とすべきは、なぜ、座礁したのかということです。座礁するような水深が確保できていない運河だったということで、運河管理者の責任が問われるべきです。

 今回の事故では、6日以上スエズ運河が通行できないという異常事態となりました。その損害賠償はどうなるのでしょうか。

 少なくとも、日本は関係ありません。保険に入っているからです。そこで困るのは、イギリスです。理由は、ロイズ海上保険はイギリス発祥の保険会社(組合)であること(今回の保険会社は国際P&Iグループです)。今回の保険適用損害額が膨大なものになると、イギリス経済にも大きく影響を与えます。

 新聞社のダブルスタンダードが今回の事故でも明らかになります。新聞社の関心は、コンテナ船の所有者。所有者が運営したわけでもなく、台湾の別会社が運営していた船なので、所有者が謝罪、などまったく意味不明の視点なのです。

 今回の事故は、すでに保険会社のレベルになっています。保険会社としては、安全運行できず座礁したという施設管理者側の責任をどこまでも追及するでしょう。座礁したということは、人工運河に必要な水深が確保されていなかったことになります。これは施設管理者の責任です。高額な通行料は、安全航行に裏打ちされたものである必要があります。さらに、運河庁から二人の水先案内人がエバー・ギブン号に乗り込み、操船指示を出していました。

 保険会社は運河庁の判断と施設の不備を根拠にどこまでも保険料の支払いを拒否するでしょう。エジプト政府は、支払いを要求する。この関連で、イギリスとエジプトとの関係が急速に悪化する。

 この視点を投資に活用できるかどうかが、お金持ちになれるかどうかの境界となります。管理人は、関心ありませんが。

ロイターがフェイクニュースを流す

 下の画像をご覧下さい。ロイターが作成した動画なのですが、フェイクなのは一目瞭然。『3月26日に大型コンテナ船「エバーギブン」が座礁』と嘘の情報を動画で配信しています。


Source: Yahoo News

 何がフェイクか分かりますよね。ロイターってこんな低レベルの仕事をしているの? と驚いてしまいました。誤字のレベルではありません。いつ事故が発生したのかという、記事の根幹部分の間違いです。だからフェイクニュースなのです。

 この記事だと、スエズ運河の閉鎖期間はわずか3日となります。これは事故の被害を著しく小さく見せることになります。だからこの日付はとても重要な情報なのです。

 もし、ロイターがこの誤りを無視することがあるとすれば、同社の配信するすべての記事はイカサマの疑いが濃厚で、もしかしたら故意にやっている可能性も排除できない、と考えるのは当然のこと。

 日付を間違って報道するのは、事故の被害を大きく見せる、あるいは小さく見せる、のにとても有効な手段だからです。この部分がなおざりにされるのなら、何のための報道機関なの? と批判を受けるのは当然のことです。

 イギリスロンドンに本社を置く通信社ロイターがこれを故意にやったとしたら、保険会社との関係を真っ先に疑う必要があります。世界の目をこの事故から遠ざけて、保険金支払い交渉を有利に運ぼうとする戦術です。それにロイターが荷担した?

 この誤報道を放置するのであれば、その可能性が高いのかも知れませんね。

 今回のコンテナ船の位置確認は、vesselfinderというサイトを使いました。

 船舶の現在位置の確認は、『AIS ライブ船舶マップ』を使っても確認できます。

 尖閣諸島周辺の海域を状況を国民が監視するという意識が重要かも知れませんね。


 Imege: AIS ライブ船舶マップ、尖閣諸島 魚釣島

 
 Imege: vesselfinder、尖閣諸島 魚釣島

船舶だけではなく、航空機の位置も分かる

 航空機の現在位置を確認するには、『flightradar24』というサイトが便利です。

 詳しくは過去記事『世界中の旅客機の飛行状況をリアルタイムで閲覧できるサイト』をご覧下さい。

その後どうなったエバー・ギブン号賠償問題(追記)

 エバー・ギブン号は、その後、どうなったのでしょうか。追加情報を書くことにします。

 2021年3月29日午後、やっと離床に成功したエバー・ギブン号は、技術検査のために曳航中、グレートビター湖に向かって移動し始めました。

 スエズ運河庁は、作業費用のほか運河閉鎖にともなう通過料収入の損失、風評被害などへの賠償として当初9億1600万ドルを請求し、のちに5億5000万ドルに減額しますが、船主である正栄汽船は1億5000万ドルが妥当と主張して対立しました。

 これに対し運河庁は、地元裁判所に提訴し、エバー・ギブン号を差し押さえます。

4月13日、エジプトの裁判所は、エバー・ギブン号がスエズ運河を離れる前に9億ドルの補償金を支払わなければならないと裁定します。エバー・ギブン号の保険会社は補償価格を受け入れず、船の拿捕に失望を表明しました。

5月12日、スエズ運河庁はスエズ運河南部の水路拡幅計画を提出し、エジプト当局によって承認されました。拡幅計画は2年以内に完了する予定としています。

6月23日、船を所有する正栄汽船側とスエズ運河庁側との賠償金をめぐる交渉が合意に達した、と正栄汽船に保険を提供していたイギリス保険事業者(国際P&Iグループ)が発表しました。合意した金額は明らかにしていません。

7月7日、エジプトのイスマイリアで双方の代理人が合意文書に署名し、エバー・ギブン号は航行を再開しました。

 船主側はいくら支払ったのでしょうか。交渉の詳細は明らかにされていませんが、一部報道(The National紙)では、5億4000万ドル支払われたとされています。運河庁要求額より1000万ドル少なくなっています。

 エバー・ギブン号は、その後、ロッテルダムに向かいます。ところで、エバー・ギブン号はどこから来たのでしょうか。その答えは、中国です。

ロッテルダムからの帰路、エバー・ギブン号は2021年8月にもスエズ運河を通過していました。その時は貨物ゼロの状態でした。

11月にヨーロッパに向けて出発する前に、中国で1か月の修理が行われました。

エバー・ギブン号が2021年12月12日に事故当時を上回る量の積荷を伴ってスエズ運河に再びやってきます。この事態に対し、スエズ運河庁は緊急事態宣言を発令し、特別警戒にあたったようです。

2022年6月9日のエバー・ギブン号の位置

 さて、2022年6月8日現在、エバー・ギブン号はどこにいるのでしょうか。どこだと思います?

 答えは、中国です。座標は、30°37’56.80″N 122°02’47.50″E

 上海の洋山深水港に停泊中です。この周辺には、おびただしい数の船舶が停泊しています。コロナによる上海都市封鎖の影響で、船荷の積み卸しもままならないのでしょう。

 あなたの閲覧時点でのエバー・ギブン号の位置がこちらです。

ちょっと気になる懐具合

 スエズ運河庁は、年間どのくらいの収益を上げているのでしょうか。調べてみると、2021年3月のエバー・ギブン号の事故があったにもかかわらず、同年6月期には過去最高である58億4000万ドルの収益を上げています。正栄汽船(というより、イギリスの保険会社)から受け取った金額の10倍の収益があるのです。儲かって仕方ないというところでしょうか。

今治造船の子会社である正栄汽船が所有する「エバー・ギブン号」。台湾の長栄海運がそれを運航。乗組員は全員インド人。保険はイギリスの保険組合。事故当時、スエズ運河庁より2名の水先案内人が乗船し運行を指示。さらに、積み荷の権利者多数。

 考えただけでもぞっとします。事故処理の担当者は逃げ出したくなるような事案だったのではないでしょうか。

 スエズ運河の通行不能が一週間足らずで解消でき、補償についても3ヶ月程度で決着しました。特に、補償問題が長引くことは、関係者の誰にとっても望ましいものではありません。船がスエズに留め置かれた状態では、コンテナ船の減価償却が進むだけです。そして、乗組員の健康状態も心配されます。さらには、積み荷の補償問題。

 エバー・ギブン号クラス(20000TEU)の巨大コンテナ船の建造費は150億円程度かかるようです。船の寿命は20年と短いため、1日あたり200万円が失われていきます。さらに大きな負担が、荷主に対する補償と乗組員に対する給与。

 こんな時のための保険なのですが、保険会社も大変です。「スエズ運河管理庁(CSA)のオサマ・ラビ局長は先月31日、エジプト放送「サダエル・バラード」とのインタビューで、「われわれは10億ドル以上の賠償金を受け取る」と述べた。」という2021年4月4日配信のWow!Koreaの記事がありましたが、上で、スエズ運河庁に支払った額は5億4000万ドルとの報道を書きました。

イギリスの保険会社がそんな金額を支払うはずもなく、たぶん、もっと低い金額だったのではないかと思います。保険会社の戦術としては、今後、スエズ運河の通行に関しては著しく高額の保険料を課すというものでしょう。

 スエズ運河庁としては、保険会社が相手では分が悪い。スエズ運河を通行する船舶に高額な保険料を課されたとしたら、スエズ運河を通行する船舶が激減する恐れもあります。

 今回の事故は、事故発生原因の究明がなされないままに終わりを迎えたという印象です。運河庁側から2名の水先案内人が乗り込み、船の運航指示をしていたこと、運河庁が悪天候が予想されるにもかかわらず、運河の通行許可を出していた、という不手際を保険会社は追求したことでしょう。

 何はともあれ、事故の被害を最小限に止めることができたのは、関係者の方々の尽力の賜だと思います。

 関係者の皆様、お疲れ様でした!

 この気持ちを伝えたく、追記しました。

出典
AFP BB News
https://www.afpbb.com/articles/-/3339241
https://www.vesselfinder.com/vessels/EVER-GIVEN-IMO-9811000-MMSI-353136000

「船舶追跡マップで見る、航路遮断のスエズ運河」、ロイター