白内障の手術をして、無事退院しました。目に強度のアレルギーがあるためちょっと面倒な手術になりましたが、ネット上に情報がないため、似たようなアレルギー症状をお持ちの方に役立つかもと思い、記事をアップします。
アレルギー体質は手術が難しい
白内障が進行し、視力が急激に低下してきたため、手術をすることになりました。緑内障の治療も続けています。
通常の白内障の手術は、日帰りでできるほど簡単なもののようです。オペの時間は10分程度とか。ところが、アレルギーがあると簡単ではなくなる。特に、管理人の場合、瞳孔を開く薬(散瞳薬)に対して強烈なアレルギー反応を起こす体質のため、かかりつけの病院では手術できず、大学病院での手術となりました。白内障の手術では瞳孔の散瞳が必要となります。
手術を決断する要因
ここ半年くらいで急激に視力が低下しました。ただでさえ強度な近視なのに、めがねをかけてもよく見えなくなりました。
かかりつけの病院、といっても開業医ではなく国立病院機構の大きな病院なのですが、そこの眼科医によると、「うちの病院ではアナフィラキシーが懸念されるアレルギーに対する院内の体制ができていないため、大学病院で手術した方がよい」とのこと。この病院は地域医療支援病院に指定されており、紹介状を持参しない場合は、健康保険給付外で初診にかかる別料金として7,700円を支払うことになっています。別料金まで支払って診療を受けているのに、さらに別病院を紹介されるのは納得できないのですが、仕方ありません。
大学病院は、日本大学板橋病院を選びました。選定の理由は、アレルギーに対しても対応できるとホームページに書かれていたからです。この病院は大学付属病院の建て替え工事をめぐる日大理事による不正事件の舞台となった話題の病院です。
この病院にかかるのは実は二度目です。一度目は、二年ほど前のこと。かかりつけ医師から紹介状を書いてもらい板橋病院眼科にかかったのですが、診察の結果は「様子を見ましょう」ということになりました。しかし、かかりつけの医師から、再び手術した方がよいと言われ、再度、日大板橋病院宛ての紹介状を書いて頂きました。
大学病院では、視力は出ているので様子を見ますか、それとも手術をしますか? と言われました。どうやら、手術を急ぐ必要はないようです。かかりつけ医師だけが急いでいる感じ。
この大学病院では、過去の受診にかかわらず1年以内の新規患者は、初診として扱い、最低でも3人の医師が診察するというルールがあるそうです。前回から1年以上経過していたため、初診扱いで、3人の医師に診察していただきました。診察はそれぞれ個別に行われます。
3人の医師で診察結果を協議して診断結果を患者に伝える、という体制のようです。その結果は、手術を急ぐ必要はない、というものでした。というのは、アレルギーがあるために、手術のリスクが大きくなるからです。視力検査では、矯正で1.2の視力が出ているので、メガネで矯正できる、との判断のようです。
医師から、「どうしますか?」と言われても、かかりつけ医師から手術した方がいい、としつこく言われて、二回も紹介状を書いてもらっているので、管理人としては「手術をお願いします」と言うしかありません。
かかりつけ医師が心配しているのは、白内障の濁りを引き起こしている眼屑(がんそう)の存在です。白内障は、目の組織が剥がれてくるために起きるもので、この組織が剥がれることにより、レンズを支える組織も弱くなり、手術に耐えられなくなるかも知りない、という懸念があるということでした。さらに、眼屑が瞳孔に糊りのように付着し、瞳孔を開きにくくしている。
このことを日大の医師に伝えましたが、それほど心配することはないようでした。いずれは手術することになるが、それが今か、あるいは先延ばしするかは患者次第。アレルギーがあるため、手術には通常よりも高いリスクを伴う。やるかやらないかは患者が決める、とのスタンス。・・・・、そう言われても困ります。
結局、手術することにしました。理由は、ここに至るまでに以下のような長いプロセスがあったからです。
パッチテストでアレルギー物質を特定する
管理人は、散瞳薬に強烈なアレルギー反応を起こします。散瞳薬を使った後に顔がパンパンに腫れ上がり、眼球内で出血、直るのに1ヶ月もかかるほど。視力も低下し、見えにくくなります。このため、散瞳薬は絶対に使わないようにお願いしていたのですが、あるとき、アレルギーに無知の慈恵医大の医師が使ったため、ひどい目に遭いました。
そのような経緯から、かかりつけの病院の皮膚科でパッチテストをすることになりました。
散瞳薬として使われている主要な4種類の目薬とコントロールとしてのワセリンの5つのパッチでテストしました。48hr判定、72hr判定、1週間後の最終判定、という手順です。
- サイプレジン 1% 10ml
- トロピカミド 0.4% 5ml 「日点」 (先:ミドリンM)
- アトロピン 日点 1% 5ml
- サンドールP 5ml(先:ミドリンP) 72hr + 7日 +
- コントロール:ワセリン
テストの結果、サンドールPで激しい反応が出ました。それ以外は、一応、無反応でした。
そこで、かかりつけ医師は、アトロピンを使って散瞳し、眼底検査を行いました。幸いなことに、この時は、アレルギー反応は出ませんでした。
次に、大学病院で、検査するときも、このパッチテイストの結果を取り寄せ、アトロピンを使って散瞳し眼底検査を行いました。
ところが、この時、アレルギー反応が出たのです。反応の程度はひどくはなかったのですが、以前の経験があったため、大学病院に連絡。すると、すぐ来て下さい、との指示がありました。病院の診察終了時間が迫っていました。
すぐ来て下さいと言われても、病院まで1時間はかかります。何とか病院までたどり着き、通常の窓口は閉まっていたので救急外来から入り、診察を受けました。そして、アレルギーを抑える薬を処方して頂きました。
このようなことがあったため、パッチテストをやり直すことになりました。しかし、パッチテストは、「夏はできません」とのこと。何、それ?
汗を掻くと試薬が混ざってしまい、正しい判定ができないのだそうです。もし、やるとしたら、1週間入院することになります。パッチテストのために1週間も入院するなどできないので、寒くなるのを待つことになり、10月末にパッチテストを開始しました。
今回のテストでは、散瞳薬のどの成分に反応しているかを試験します。メーカーから散瞳薬の成分を取り寄せ、コントロールも含めて成分毎に9種類のパッチテストとなりました。添加剤、防腐剤、散瞳成分のどれに反応するかを確認します。
- トロピカミド
- ポリビニルアルコール
- ベンザルコニウム塩化物
- 塩酸フェニレフリン
- イプシロン-アミノカプロン酸
- 塩化ベンザルコニウム
- クロロブタノール
- アトロピン
- ワセリン
このテストの結果は、悲惨なものになりました。ほとんどの成分にアレルギー反応が出ました。全滅かと思ったら、アトロピンだけは大丈夫でした。
強い反応が出たのが No.3の「ベンザルコニウム塩化物」で、皮膚の状態のあまりのひどさに、テスト終了後に皮膚科の医師が塗り薬を処方してくれました。今でもケロイドのような跡が残っていますし、完治していません。 No4.の「塩酸フェニレフリン」にも強く反応が出ましたが、現在は少し跡が残っている程度です。
目薬の成分を皮膚に付けただけでこのような状態になるのですから、管理人が散瞳薬を怖がっている理由がお分かりだと思います。 これが目だったらと考えるだけで恐ろしい!
No.1~3 は「ミドリンM」、No.5~7 は「サンドールP」に使われている成分です。
散瞳する成分である「アトロピン」には反応しなかったことから、これを使って手術することになりました。ただし、油断はできない。濃度も影響するかも知れないし、手術で使う麻酔薬など他の成分にアレルギー反応が出るかも知れません。また、「アトロピン」は散瞳薬としての効果が小さいのが難点です。散瞳が不十分だった場合は、機械を入れて広げます、と執刀医が言っていました。手術の段階で様々な変化に対応できるいろいろなオプションがあるようで頼もしい。
いよいよ入院
新型コロナの影響で、入院もままなりません。入院の二日前に、唾液をとって新型コロナウイルス感染症の術前PCR検査を行います。この唾液の入った容器を届けるためだけに病院まで行きました。
手術の前日に入院します。まず、眼科でPCR検査結果が陰性であることを確認した後、鼻に綿棒を入れる鼻腔ぬぐい液による抗原検査を行い、判定結果が出るまで待ちます。その間、1時間20分あまり。陰性と判定されるといよいよ入院手続きです。これもとても混んでいて時間がかかる。手続きは30人待ちでした。さすがは大学病院だと妙なところで感心しました。
入院病棟に入ったのが昼近く。抗原検査室に行ったのが8時40分頃なので、3時間半もかかりました。
入院したことはほとんどないので他の病院のことは知らないのですが、大学病院の入院病棟は、とにかくたくさんの看護士や薬剤師がひっきりなしに来るという感じです。薬剤師と看護師、手術までの段取り等の説明から、目薬の処方まで事細かに説明してくれます。ところで、看護士さんは3交代。交代するたびに同じ説明が繰り返されます。そして、医師の診察も入院病棟主治医と執刀医で二度行われます。
手術前日は何もすることはないと思っていたのに、度重なる説明を聞いているだけで疲れる。血圧と体温測定も頻繁に行われます。
翌日の午前の4番目に手術です。
手術自体には不安はないのですが、やはり、アレルギーが出ないことを祈るばかりです。
いよいよ手術です
手術は4番目だったのですが、3番目の患者さんがまだ入院してこないということで、手術の順番が繰り上がりました。
パンツだけになり、手術着に着替えます。そして、車いすで手術室へ。
手術台は歯科医院の椅子のような倒れるシートで、そこに座ると、手早く、心電図を取り付けられ、ナースコールを持たされます。手術中は絶対に動いてはいけないということで、何かあればナースコールのボタンを押します。
そして、いよいよ手術開始。とにかく先生方の動きが速い。まるで最短時間で手術を競う競技のようなスピード感です。周囲には、6、7人のスタッフがいます。
顔を覆う布を被せられ、手術する目を開いた状態で麻酔の目薬が流し込まれます。そして、開いた眼球全体を覆うようにラップ状のものが被せられた・・、ように思いますが、見えないのでよく分かりません。これにより、視界は何も見えなくなります。見えるのはライトの明るさだけ。
麻酔は目だけの局部麻酔なので、意識はそのまま。麻酔が効いているため、何をされても痛みはありません。
メスが入り、角膜の切開、次に水晶体を取り除いた・・と感じます。後は、問題の瞳孔を開く作業。先生から、瞳孔の拡張が小さいので、機械を入れて広げます、との説明がありましたが、患者には何をされているのか分かりません。
この作業に少し手こずったようですが、新しいレンズを入れて超音波をかける作業。これって何をしているのだろう? 見えるのは、ぼんやりした光だけです。
しばらくすると、「終わりました」の声。手術はうまくいったようで安心しました。手術に要した時間は25分程度です。
管理人が心配していたのは、水晶体を支える部分(毛様体かチン小帯?)が弱い場合、硝子体の手術に変更になります、との説明があったことでした。その場合、かなりの時間がかかるようです。今回は通常の手術で済んでホッとしました。
手術した目に大きなガーゼを当てて手術は終了です。執刀医がうまくいきましたと説明してくれました。ありがたい!
後は、再び、車いすに乗って病室に帰ります。
そして、アレルギー反応が出ないことを祈ります。
少し痛みを感じたので、鎮痛剤を処方して頂きました。
翌朝、痛みもなくなり、術後の経過も良好ということで、無事、退院しました。
費用はいくらか
入院は、二泊三日で食事付きです。手術も含めて、支払った金額は8万円弱でした(片眼分)。もっと高額かと思っていたので意外でした。自己負担3割で8万円なので、医療費総額としては27万円程度かと思います。あれだけ大人数が関わる手術なので、人件費も相当のものでしょう。
入院する部屋は、ランクにより料金が異なります。管理人は入院したことがないので、経験のためと思い大部屋をお願いしました。通常の大部屋は8人くらいのようです。そして、大部屋の料金は「無料」。
今回は3人部屋だったので、数万円支払って3人部屋にしなくてよかったと思います。手術・入院代金が低額で済んだ理由は、大部屋を選んだことが大きいように思います。
術後の状況、見え方
手術の翌日には眼帯を外し、手術した目で見ることができます。その見え方は、明るく鮮明なのですが、どうも焦点が定まらないという感じです。ギラギラした感じで見えにくい。しかし、裸眼で文字がくっきり見えることなどここ数十年経験していないことなので感動します。
見え方が安定するまで1ヶ月ほどかかるそうです。
手術は片目ずつ行うことにし、もう片方の目は2週間後に行います。両眼同時に手術しますか、と聞かれましたが、アレルギーが出て手術に失敗すれば両眼失明なので、怖くてそんな手術はお断り。片眼ずつ手術することにしました。
手術した目には、パソコンの画面閲覧に適した40cm程度の距離で焦点が合うように設計されたレンズが入っています。これ以外の距離はぼやけて見えます。人工レンズを入れたため、焦点を合わせることはできず、それは眼鏡で補うことになります。
手術していない方の目は、眼鏡をかけないと何も見えないので、眼鏡使用が不可欠。このため、生活にはとても不便です。片眼づつ交互に使いながら、眼鏡をかけたり外したりの繰り返し。これが、あと、2週間続きます。
両眼の手術が終了してから1ヶ月程度は、見え方が安定しないので、新しくメガネを作るのはその後になります。
視力が落ちたため、運転免許証の返納も考えたのですが、免許証を本人確認証明書として提示する機会が頻繁にあるので、やはり、免許証がないと不便です。 運転免許証の更新は今年なので、更新に必要な視力が出ればよいのですが。
ちょっと気づいた点を追記します。
手術から五日後の検査で、傷口も問題なくきれいで正常と診断されたのですが、家に帰ったら目が痛い。結論を書くと、それは乾燥が原因でした。ストーブの熱風や空気が乾燥していることが原因だと思います。念のため、眼帯をして寝たら直りました。手術後は、涙が出にくくなっているのかなぁ、と感じています。
入院して感じたこと
以前から眼科に行くたびに感じていたことですが、白内障の患者がとても多いと思います。そして、手術を受ける患者もかなりの数。このため、手術は2、3ヶ月の順番待ちの状況です。入院で同室だった患者さんはその日、24番目の手術と言われていました。
なぜ、こんなに白内障を患う人が多いのでしょうか。昔はもっと少なかったと思うのですが、今は、お年寄りのほとんどが白内障なのではと思うほどです。お年寄りの誰に聞いても白内障だと答えます。
白内障は老人だけでなく、若者も罹る病です。原因はいろいろあるようです。ということは、原因が本当は分からない、ということなのでしょう。
飲酒が原因との研究結果があるなど、無頓着な記事も見かけますが、じゃあ、酒を飲まない人は白内障にならないかと言えばそんなことはありません。やはり、原因が分からない。飲酒が原因の一つと考えられる患者についての研究論文が発表されたということで、原因が分かったわけではありません。
管理人は、リンパの流れが影響しているのではないかと勝手に考えています。リンパ管は動脈、静脈と同様に身体中をくまなく巡る管ですが、そこを流れるリンパ液は血液のように心臓やふくらはぎのポンプ機能で流れているわけではなく、筋肉の動きで流れていると考えられているようです。
ということは、運動量が少なくなるお年寄りに多く見られる白内障は、リンパ液の流れが滞ることで発症しやすいのではないかとの仮説を立てることができそうです。門外漢の素人の考えなのですが、この視角から書かれた記事を読んだことがありません。
眼球の大半を占める硝子体の中身はほとんどが水。無色透明なゲル状の物質なのだそうです。当然、リンパ液で満たされている訳ではありません。むしろ、リンパ液は老廃物の回収の役割を果たしているようなので、その流れが滞ることで代謝が阻害されているのではないでしょうか。
硝子体の内容物は、生涯変わらないのでしょうか。それとも入れ替わっているのでしょうか。もしそうなら、その頻度は? その代謝に関与しているのは、毛細血管でしょうが、硝子体には毛細血管はありません。やはり、リンパ液との関わりが鍵になっていると思います。
疑問が膨らみます。
もう片方の目の手術
最初の手術から2週間後に、もう片方の目の手術を受けました。前回と同様で、何も変わったことはない、と思っていたのですが、ちょっと様子が違いました。
まず、手術に要する時間。前回は病室から手術室に向かい、再び病室に戻るまで30分程度でした。ところが、今回は2倍の1時間もかかりました。手術そのものは同じくらいの時間なのですが、待っている時間が長かったのが原因です。
さらに、前回は手術中の痛みは全くなかったのですが、今回は、最初から痛い! 最初に消毒薬で目を洗うのですが、それが染みて痛い。手術中も痛みを感じました。後で先生に理由を伺ったら、前回は、麻酔の注射と目薬の麻酔を使ったが、今回は目薬だけだったそうです。
・・・聞いていないんだけど・・・。
術後の治癒速度を上げるための変更のようですが、こんなに痛いのなら、もうやらない、と思ってしまう。それが2回目でよかった。1回目からこんなに痛かったら本当に片眼だけで治療を終えていたかも知れません。
幸い、術後の経過も良好のようで、出血もなく、痛かったけど麻酔注射を使わなかったのが正解かも。
医療費が還付される
両目の手術にかかった医療費は合計で16万円ほどです。実際に支払った金額です。その約半額が高額医療費還付金として戻ってきます。お金が実際に口座に振り込まれるのは、最後の支払日からだいたい3ヶ月後くらいです。8万円強が戻ってくるのでうれしい!
支払った16万円には、還付の対象とならない入院中の食事代も含まれています。これを差し引くと、6割弱還付されたのではないかと思います。
こんな制度があるなんて知らなかった。入院の時、入院受付で事前に申請すれば速く還付されるらしいことを聞いたのですが、めんどくさいので事後申請にしました。
出典:
「硝子体の構造とピアルロナン」、松浦豊明ほか、日本バイオレオロジー学会誌(B&R)第17巻第4号、2003