とても不思議な通訳の世界

 あなたは同時通訳サービスのある国際シンポジュームなどに参加したことがありますか。

 あるいは、同時通訳の入った報道番組を見たことがありますか。

 ここで質問です。

 「あなたは、同時通釈者の日本語を理解できましたか?」

 管理人は、ほとんど理解できなかったという経験があります。話している言葉は日本語なのに、意味不明のことをたらたらと流しているという印象を受けました。それも、一度や二度ではなく、ほとんどの場合、日本語の意味が理解できない。

 次の質問です。

 あなたは外国の子供たちに対するインタビュー番組をみたことがあると思います。そして、登場する子供たちがなんと素晴らしい大人びた受け答えをするのだろうと感心したことがあると思います。これに対し日本の子供たちに同じ質問をしたらもっと子供じみた回答ばかりだと。

 このような番組を観て、外国の教育は素晴らしい。子供の頃から自立心と弁論能力を鍛えるという教育方針はまったくもって素晴らしい!

 などと感じたことはありませんか。

 このフェイク影像を自分の都合のいい場面で使う日本の教育専門家がたくさんいました。

 上で紹介した2つの事例で気づいたことは何ですか?

 前者の事例では、同時通訳は日本語としてボロボロの内容だと言うことです。そして、後者は、高学歴の専門家が最高の日本語で作り上げ「児童の発言」として発表した大人の “作文” だということです。

 ニュース番組などで同時通訳者を使う必要性をまったく感じません。何を言っているのかまったく理解できないからです。これでは報道の意味がありません。

 同時通訳を聞いていると、発言者がまだ話していないことを通訳しています。どうやら同時通訳と騙ったフェイク番組のようです。

 同時通訳者の日本語が理解できない原因は何なのでしょうか。通釈者の話す日本語は、とても日本語っぽいのですが、理解不能です。一流の同時通訳者の方はとても高学歴の方たちで、日本語がへたくそなわけではありません。それなのに理解不能の日本語通訳をします。

 なぜ、報道番組では、同時通訳を使うのでしょうか。おかしな日本語で、意味不明なのに。

 実は、管理人も何度か通訳をしたことがあります。その時に感じたのは、同時通訳の方が楽ちんだということでした。

 相手のある会話の中で、まとめて通訳するというのはとても難しい。相手の言ったことを覚えていないからです。このため、相手が話したことをその都度細切れに通訳します。管理人の頭の中は空っぽ。機械的に通訳するだけです。双方向の通訳をすることになるので、かなり疲れます。疲れないでやる方法が頭を空っぽにするやり方。これは本当に楽です。

 実は、これが通訳者にとっての落とし穴。頭を空っぽにすることでどんどん通訳できるのですが、前のことは覚えていません。通訳したのだから中身を覚えているはず、というのは外部の人の思い込みです。覚えていては通訳できません。

 以前、とても上手な通訳者の方に聞いたのですが、これが通訳者の後遺症だと話していました。つまり、頭を空っぽにするやり方に対する後遺症ということです。通訳した内容が話全体でつじつまが合うかどうかは知らない。少なくとも今言ったことは正しく訳している。

 外国の子供たちはとても大人びたことを言う。これがフェイクなのは、最近のバラエティー番組を観れば分かります。翻訳者が撮影された影像を後になって観て、それを翻訳した結果なのです。世界中、どこの国の子供も話す内容、レベルは似通っています。

 ところが日本では長年、ハイレベルの翻訳者の翻訳文が外国の子供たちの発言として報道されてきました。まさにフェイクの世界です。何がフェイクかというと、子供の言葉を大人の言葉に勝手に置き換えているからです。

 日本の最高レベルの同時通訳者の日本語が理解不能。外国の子供たちの発言が最高レベルの大人の日本語で書き換えられている。この意味はとても重大な問題を孕んでいると感じます。

 これが実態のように感じました。

 普段なら関心のないテーマかもしれません。しかし、スウェーデンの環境​保護活動家グレタ・トゥーンベリさん、16歳の発言ともなれば別問題でしょう。

 子供の発言を “美しい日本語” に翻訳することにどれだけの意味があるのか、と感じます。
 
 グレタさんの発言を日本のメディアがどのように翻訳して日本語で報じたのか、注目したいところです。