自転車は道交法上「軽車両」に分類されるため、信号は歩行者用ではなく車両用に従わなければならない、っ本当なの?

 2022年11月5日に日経新聞Web版が「歩行者信号、青で渡ったらダメ 自転車悪質走行に「赤切符」 思わぬ落とし穴も」という記事を配信しました。

 この記事では、青信号で交差点を自転車で渡った女性が警察官に呼び止められます。警察官は「青だったのは歩行者用の信号です。車道の信号は赤でしたよ。守らなきゃいけないのは、車道の信号です」と説明。自転車は道交法上、「軽車両」に分類されるため、原則、車道を走り、車道の信号に従わなくてはならない。最終的に「赤切符」を切られることになりました。

 車の免許を持っている人は分かると思いますが、駐車違反やスピード違反で切られるのは通常「青切符」です。罰金を振り込めばそれでおしまい。ところが、この女性が切られたのは「赤切符」です。「赤切符」の怖さはよくご存じでしょう。

 「赤切符が交付されれば、警察官の取り調べを受け、書類送検される可能性もある。信号無視などでは「3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金」に科せられるケースも出てくるとみられる。」(同紙)

 記事は、ほとんど太鼓持ちのような中身で、読者の疑問に何も答えない内容になっています。

 読者の疑問とは、車両信号が青でも、歩行者信号は赤。この時、本当に自転車は交差点を渡っていいのか? というもの。

 ほぼ、全ての自転車は、歩道を通行しているときは、歩行者信号にきちんと従っています。ところが、日経新聞の書き方だと、歩行者信号が赤でも車両信号が青なら渡ってよいことになります。そして、そのようなケースはとても多いのです。

 日経新聞は、記者の教育をしっかりすべきでしょう。問題の所在は、女性が赤切符を切られたことではなく、現在の道路交通法の問題点を指摘すべきでした。

 車道を走っている自転車が車両信号に従うのは当たり前です。問題は、自転車が歩道を走行している場合です。

 自転車に乗っている人のほぼ全てが歩行者信号に従っているのは、街角の光景で分かること。

 日経新聞の記事が本来指摘すべきことは、道路交通法が歩道を通行する自転車をほとんど想定していないということです。

 本来、自転車は「軽車両」に分類されるので、歩道は通れませんが、自転車が通れる歩道もあります。そのような歩道には標識があるのですぐに分かります。猿でも分かる。

 問題となるのは、標識がないのに自転車が普通に歩道を走っているような幅の広い歩道です。

 そのような道路で、もし、自転車が歩道ではなく車道を走ったら、交通の妨げになります。車のドライバーからすれば、自転車が邪魔と感じるはずです。

 太鼓持ちライターは、この問題を一切書きません。

 自転車が歩道を走れるのは、歩道に「普通自転車歩道通行可」の標識等があるとき。ところが、そのような標識がないのに、チャリに乗った警察官は歩道を走っています。

 太鼓持ちライターが取り上げる警察が出している『交通規制基準』。おいおい、ふざけているの? の世界です。

 通達行政の弊害から、そのような規制は法律の条文に書くことになっているはずです。

 では、法律のどこに書かれているのでしょうか。

 管理人は、調べません。太鼓持ちライターが道路交通法関連法令ではなく、『交通規制基準』を示している時点でいやになりました。

 法令は、法律 ⇒ 施行令(政令) ⇒ 施行令(省令)、という構成で成り立っています。具体的には、

 道路交通法  ⇒ 道路交通法施行令 ⇒ 道路交通法施行規則

 これ以下が「通達」です。

 今回の事例を見ると、法的根拠は曖昧なように感じます。通達で法令を超える処罰を課すことは厳禁だからです。しかも、それは、法令に書かなければならないというルールがあります。通達行政の反省から生まれたルールです。

 今回の事例を見ると、赤切符を切ったという根拠となる参照条例は何なのかが気になります。その根拠が「通達」ではお話になりません。そのような規制は法律に書くことになっているからです。道路交通法を辿って省令レベルまで見ても、歩道を走行する自転車は想定していないのではないでしょうか。

 結局、現行の道路交通法令は、歩道の自転車走行を十分に想定しているとは言えないのです。本来であれば、道路交通法を所管する国家公安委員会(警察庁)が法令改正をすべきです。

 「自転車通行可」の標識と法令がミスマッチしているのです。現実に、「自転車通行可」の標識のない歩道を警察官が自転車で走行している。

  ・・・という指摘を日経新聞記事の執筆者、橘川 玲奈さんが記述してくれたらよかったのですが。

 まあ、期待はしていませんが。