中国って共産党による一党独裁の国です。
新聞などを読んでいると、「共産党員」という言葉が目につきます。中国では、一応、共産党独裁の範囲内で他の政党も認められているようですが、そもそも政党政治ではないので、共産党以外の他政党の存在意義はなく、形式的なもののようです。
そこで疑問に思うのは、なぜ、中国国民は、全員共産党に入党しないのかということです。
なぜ、中国国民は全員共産党に入党しないのか?
共産党員になると公務員になれるし、給与面でも優遇される、とされています。こんな美味しい話があるのなら、国民全員が共産党に入党すればいいのにと思います。
どっちみち中国は共産党独裁の国なのだから、国民は全員共産党に入党して、その中で、派閥を形成し、自分の主義主張を展開していく、という流れが合理的なように感じます。それ以外の選択肢は、一党独裁国家にはあり得ません。
ところが、共産党員の数は極端に少ない。その割合は、全人口のわずか6%に過ぎません。
参考:「中国共産党員、9000万人突破、全人口の6%: 日本経済新聞(2019年6月30日付け)」
これってとても奇妙です。中国は共産党による一党独裁です。それ以外の政治的動きは厳しく制限され、違反者は厳しく罰せられます。
ここで、ふと、「共産党員」というタイトル(資格)のプレミアを維持するために、入党制限を厳しくしているのではないか。そう感じました。
現在、テレビで流れている「みんなで大家さん」のCM。「みんなで大家さん販売株式会社」という会社のCMです。「ワシもじゃ」「私もよ」「拙者もでござる」。町人も、女性も、武士もみんなが大家さん。
このCMを見ていて疑問に感じるのは、みんなが大家さんになるとその部屋を誰が借りるのか、ということです。借り手がいない大家さんなど存在しません。つまり、みんなが大家さんになるという会社の目標は、この会社の破滅への道ということになります。目標が達成すると、借り手が一人もいなくなります。
何となく、共産党員の数の謎は、みんなで大家さんの仕組みに似ているように感じます。
共産党員になるための要件はゆるいのになぜか党員にはなれない不思議
共産党員になると様々なメリットがある、と言われています。それを多くの国民も実感していると思います。
そこで、共産党員になるための資格要件を調べます。その要件とは次のものです。
(2)党の綱領及び規約を承認する者
(3)基層党組織に参加し,積極的に活動を行う者
(4)党の決議を執行する者
(5)定期的に党員会費を納付する者(所得に応じて、収入の0.5~2%程度)
党規約第1章第1条 「党員になるための条件」
これを見ると、中国人民であれば誰もがクリアできる要件です。ゆるゆるの条件といえます。党員会費は、日本における労働組合会費より低いくらいの低率です。
ではなぜ、中国国民は、有利な便益が得られるとされる共産党員にならないのでしょうか。
その答えは、入党したくとも審査が厳しくて入党できないから。
なぜ、審査が厳しいのか。それは「みんなが大家さん」になると困るからです。共産党員としてのインセンティブは、党員の数が少ないからこそ得られるもの。誰もが党員になったら現在党員の人たちは既得のインセンティブを失ってしまいます。
では、この既得権益を守るために、彼らはどうしているのか。それには審査基準を厳しくします。
(2)党組織より1年以上の特別教育を受ける。この間,「入党積極活動者」(入党積極分子)としての審査票が作成される。
(3)入党願書を作成・提出する。この際,正式党員2名の推薦が求められる。
(4)入党願書と審査票に基づいて,基層党組織(党支部)が人物考査を行い,同党組織会議での決議を経て,その結果が党委員会に報告される。
(5)党委員会責任者が,「入党積極活動者」との面談を行う。この段階で許可が下りると,該当人物のステータスは,「入党積極活動者」から「予備党員」に格上げされる。
(6)入党宣告を行う。
(7)予備党員として活動する。予備党員期間は,通常1年以上である。
(8)予備党員期間中,基層党組織は,該当人物を監査し,その上で,正式党員としての受け入れに関する意見書を作成し,党委員会に提出する。
(9)意見書に基づいて,党委員会が審査を行う。仮に党委員会が,正式党員条件を満たさないと判断する場合,該当人物の予備党員期間が延期される。
(10)審査通過者は,正式党員願書を提出する。願書は,基層党組織の承認後,党委員会に提出され,審査が行われる。
(11)正式な党員条件を満たすと認められる場合,正式党員となるための諸手続きを行った上で,党員資格が付与される。
出典:(1)
党の規約で入党の窓口を広げておきながら、実際には簡単には入党できない仕組みを作り、党員資格の貴重性・優越性を維持しようとする仕組みです。
この意味で、日経新聞の「中国共産党員、9000万人突破」の記事タイトルがおかしいことに気づきます。何を考えて報道をしているのでしょうか。それとも、皮肉として付けた記事タイトルなのでしょうか。現実は、「突破」ではなく、「やっと認めた」ということです。
みんなで大家さんの例でも分かるように、中国国民がみんなで共産党員になると、共産党政権は破綻します。
共産党政権にとって最も怖いことは、外国との戦争などではありません。中国は一党独裁の国家体制なのに、中国国民が、なぜ自由に共産党員になれないのか、という素朴な疑問に気づくことだと感じました。
なぜ、中国共産党の旗は旧ソビエト社会主義連邦共和国の国旗と瓜二つなのでしょうか。これは、現在の中国の成立が、旧ソ連の傀儡国家だった名残です。中国四千年の歴史を標榜する時、何とも情けない汚点となっています。
党規約第1章第1条。最も基本的なことが書かれている部分です。そこには、誰でも共産党員になることができると書かれています。しかし、現状は、全国民の6%しか党員はいません。党員になりたくてもなれないような仕組みができあがっているからです。
このような既得権を守るために党員審査基準を厳しくするという行為は諸刃の剣。党員ではない国民が94%も存在する共産党体制って何なの? という素朴な疑問が沸きます。
管理人の素朴な疑問は、中国人民の疑問でもあるのでしょう。
中国が、みんなで大家さん方式を採用した時、つまり、あなたも私も共産党員となった時、共産党体制の瓦解は目前に迫っています。
中国共産党が最も恐れていることは、現指導部がなぜ中国を支配・統治するのか、あるいは、できるのか、という素朴な疑問の答えを持っていないことではないでしょうか。
指導部って、誰が選んだの? 何の権限で指導部に座っているの? 国民は指導部のいいなりになるしか生きる道はないの?
このような疑問が生じないように、共産党の指導が適切だから国が急速に発展し、国民が豊になっている、と宣伝します。ところが、共産党の影響が及ばないところで、さらに発展している国や地域が存在すると目障りです。それが、香港と台湾です。
共産党があるから国が発展する、というロジックを成立させるためには、共産党の権限が及ばないのに発展している地域・国を是が非でも共産党の支配下に組み入れる必要があります。もし、組み入れに失敗すると、そもそも論の部分の疑問に国民が気づきます。
なぜ、共産党は中国を統治しているのか、と。世界の治世者が長い歴史の中で最も説明に苦慮してきた問題です。その結果、導き出したのが民主主義です。その中身の優劣はともかくとして、主権は国民にある。
中国共産党は、なぜ、国を統治できるのかという答えを持っていません。国が発展し人民が皆が幸せになれる、という説明は、歴史上の為政者が必ず使う表現です。共産党統治の正当性を何ら示していません。
1949年10月1日の中国建国から70年。当時、建国のために戦った戦士たちのほとんどは亡くなっています。共産党指導部は誰がどのように選ぶのでしょうか。建国の英雄の二世や三世が党幹部の椅子に座るのでしょうか。もしかして世襲制?
いずれにしても、国民は蚊帳の外です。そんな政治体制の国が国家と言えるのか疑問に感じます。94%の国民で別の国を作るという考えを持つ人たちも当然増えてくるのでしょうね。
中国共産党が何を宣伝しても世界の誰も信じなくなった悲しい現実
中国は世界の歴史の中でも偉大な国です。中国4千年の歴史の中で、いくつかの時期、世界的な影響力を持っていました。
そして、現在。中国政府の発表を世界の誰もが信用しない、という悲しい状況になっています。こんなことは、中国4千年の歴史の中でも希有な現象でしょう。
中国政府の発表内容は、裏がとれないという特徴があります。つまり、それが真実なのかが客観的に証明されない。どの発表もねつ造だと思われることばかりです。
それに対し、中国の報道官は、伝家の宝刀である「内政干渉」という刀を抜いて振り回しています。これでは、世界から見放されるのは当然のこと。伝家の宝刀は、”抜いたらオシマイ”です。
それでも中国政府が伝家の宝刀を振り回している理由は、それだけ追い詰められているということなのでしょう。所得格差が天文学的数値になっているにもかかわらず、どうすることもできない失政を国民に隠すために振り回す伝家の宝刀。しかし、それをやるたびに、世界の信用を失っています。
追記
このサイトは、政治的なことは書かないようにしているのですが、書いてしまった! これで、管理人は中国に観光旅行で行けなくなりました。一度中国に足を踏み入れたら逮捕監禁されるかも知れません。
怖いです! そうか、このことを誰も書かないのは、皆、怖いからなのか! 何となく納得。中国にうっかり観光旅行をすると、過去のSNS投稿を根拠にいつ逮捕されるか分からないというのは、とてつもなく恐ろしいことです。逮捕・拘束されたどうかも分からず、行方不明扱いになる。
管理人は、中国に行けなくなってしまいました(トホホ)。
出典:
1. 「中国共産党員資格と賃金プレミアム――メタ分析―」、馬 欣欣, 岩﨑 一郎、アジア経済 2019 年 60 巻 3 号 p. 2-38
2) 「世界最強の政党「中国共産党」の実像――14億人を支配する7人」、2019年05月21日、ITmedia ビジネスオンライン