大ピラミッドの新たな空洞が確認されるというニュースが駆け巡っているけど、NHK視聴者にとって驚きはない!

186年ぶりに未知の空間発見のニュースは、日本人なら驚かない

 2023年3月2日に共同通信が「クフ王のピラミッド内部で空間発見」という記事を配信しました。

 その中身はサッパリ分からない書き方になっています。共同通信の記者はNHKを見ていないようです。

 管理人の関心は、空洞がピラミッドのどの場所で見つかったのかということです。

 外国の記事やNHKの外国語放送を見ると、現在、ピラミッド内部に入る入り口として使われている部分の上部にある「本来の入り口」付近だと分かりました。この場所に空間があることは、2017年11日4日にNHKが放映した『シリーズ 古代遺跡透視 大ピラミッド 発見!謎の巨大空間 』で既に紹介済みのこと。

 この位置に空洞があることは、名古屋大学の森島邦博特任助教らによる「ミューオン」と呼ばれる素粒子を用いた調査から分かっていました。2017年頃の調査です。この時の調査については、調査に同行したNHK取材班が詳細な番組を制作し、過去に何度も放映されたので、多くの日本人は知っていることです。なぜ、ピラミッドを透視できるのかの理論が難しく、文字で書かれてもサッパリ分からない。しかし、NHKの番組を観た人なら、その仕組みが理解できる。ということで、知りたいのは、この空洞はどのような構造で、何かということです。

 ボアホールを掘削し、ファイバースコープを入れて穴の存在を確認したようです。

 その結果は、重量軽減のための構造物らしいと分かりました。穴の幅は2メートル、長さは9メートルで、その先は行き止まりになっています。天井部分は合掌造りのようになっています。

 今回の調査でもNHK取材班が同行しているようなので、詳細は、NHKの番組を待つことにします。

 この件に関しては、世界の中で日本人だけが詳細を知っている、という不思議な事案です。知らないのは共同通信の記者だけかも。

 下の写真は管理人がキザで撮影したものです。

 ピラミッド斜面の下の方に人が見えますが、ここが入り口になっています。そして、その上部の欠けた部分。ここが「本来の入り口」とされる箇所で、今回見つかった空洞は、この部分です。詳細は以下に書きます。

 

 ピラミッドの現在の入り口(観光客用)は、下のようなルートを辿ります。入り口のおっさんにチップを請求されますが、無視しましょう! エジプトでそんなことをすると後に来た日本人の迷惑になります。

 この上部にある構造物は、ピラミッド本来の入り口とされているようですが、そこには空洞は確認されていません。それなのに、この「本来の入り口」の上部に重量軽減構造が確認されたことから、「本来の入り口」は、王の遺体を埋葬した後で石材で埋められたと、管理人は考えます。でも、その方法は全く分かりません。

 

 王の遺体を埋葬するときには、仮設設備は取り払われていると考えられます。王の埋葬というセレモニーに仮設施設が残っていては台無しになります。つまり、本来の入り口を石材で埋めるという、巨大な石材を運搬する方法がないのです。

 今回、重量軽減構造が「本来の入り口」の上部で確認されたことから、この入り口がダミーだとは考えられなくなります。

 本来の入り口は、何らかの方法で埋め尽くされたということが有力視されます。でも、それはどうやって?

 空洞が確認された位置は、本当の入り口の下。合掌造りの屋根の真下です。当然、その部分をカメラで覗くと、合掌天井が映し出されます。

発見場所を詳細に見る

Sourcr: BBC NESWS
Photo: REUTERS

 ところで、構造的に、このスペースは必要ありません。重量軽減構造という説明は嘘です。

 城郭の石組みの専門家は、表面の部分に荷重がかかると考えると思いますが、城郭の石組みとピラミッドでは構造が全く異なります。城郭の石組みの場合、背後の地盤からの雨水の浸透に配慮する必要があります。

 ところが、ギザのピラミッドの場合、そもそも降水量は年間数十ミリ程度。背後も地盤ではなく、石です。従って、この位置に重量軽減構造を設ける必要性はないのです。上には重量物はありません。

 王の間の重量軽減構造と勘違いしているのではないかと思います。この合掌造りの構造は、重量軽減ではなく、重量分散のための構造物です。

 今回見つかった空間は、入り口部分の合掌構造の下部にできた空間に過ぎません。合掌構造にすれば、その下に空間が生じるのは当たり前のこと。合掌構造自体が重量分散を目的としており、その下の空間は、単なる空間です。その証拠に9m、水平に伸びています。本来の入り口は下方に下る構造で、石材で埋められましたが、今回見つかった空間は、埋める必要もないものです。そのため、そのまま残ったということでしょう。

石材の大きさがピラミッド北面と南面とでは大きく違う不思議

 以前から気になっていたのがピラミッドに使われている各段毎の石材の大きさです。ピラミッドの各層の石材の大きさは同じではありません。

 建造過程をアニメーションにした動画では、各層毎に同じサイズの石を配置していく、というフェイク映像が使われますが、それはデタラメです。

 ピラミッドの北側には1.5mを超える大きな石が使われています。ところが、南側には、同じ層にもかかわらず、60cm程度の小さな石が使われています。これでは水平にピラミッドを建造していくことはできません。

 つまり、ピラミッドは、同じ規格の石材を同じ層に使う、という発想はなかったことが分かります。

 過去記事でこの不思議を書いています。関心のある方は探してみて下さい。

 言葉だけでは分かりづらいので、図で説明します。

 クフ王のピラミッドの四面は東西南北に正確に面しています。

 入り口があるのが北面で、太陽の船が発見された場所に展示室が設置されているのが南面です。

 下の写真は、管理人が北面と南面で撮影したものです。二枚の画像の縮尺は大体同じです。北面1段目の石材の高さは約150cmです。そして、南面の1段目の高さは60cm程度です。2段目、3段目・・・、を比較してみても、北面と南面の石材の大きさが全く異なることが分かります。

写真:管理人が撮影

 なぜ、北面と南面とでこれほど石材の高さに差があるのか。

 ピラミッドって、何段(層)あるかご存じですか?

 大ピラミッドは現在、頂上が201段目で、その上に202段および203段目の石材の一部が残っています。このため、現存する大ピラミッドの段数は201段という値が一般的です。全体では210段であったと推測されています。(過去記事『クフ王のピラミッド:各層の石材の大きさに驚くべき秘密が?!』参照)

 これはどの面のことなのでしょうか。計測データを見れば、北面であることが分かります。では南面は何段あるのでしょうか。

 たぶん、そのデータはないと思います。過去に二度の石材高さの計測調査が行われましたが、それらは全て北面を対象に行われたものです。南面は石材のサイズが小さいため敬遠されたのではないかと思います。

 ピラミッドは段毎に水平に積まれていった。そう考えれば、北面も南面も同じ段数になります。しかし、北面と南面とで石材の高さが大きく異なっていることは上で示したとおりです。

 不思議に思いませんか。

 まず、考えられるのは、北面より南面の方が地盤の高さが高いため、石材の高さでこれを調整して水平になるように積んでいった。

 でも、そんなおバカなことはやらないはずです。巨大構造物を建造するには、基礎が最も重要です。何しろ、高さ150mの構造物を造るのですから、基礎掘削は慎重に行われたと考えられます。ピラミッド建造当初、基礎地盤は水平になるように掘削されたはずです。

 と思ったら、基盤の掘削は行わず、地形をそのまま利用して石を積んでいったようです。クフ王のピラミッドでは、北側と東側が低く。南と西側が高くなっています。しかし、現地に立つと、全て水平に見えます。それほど巨大な構造物です。

気になるピラミッド基礎の標高

 クフ王のピラミッドを訪れたのは18年ほど前のことなので記憶が確かではないのですが、ピラミッドの1段目は4辺で連続していたと思います。つまり、1段目が途中で無くなるということはない。

 しかし、ピラミッドの北面と南面とでは標高差があります。それは、どの程度なのでしょうか。

 適当なコンター図がないので、下の図を作ってみました。ピラミッドのベースの海抜標高は60m程度のようです。

 しかし、この5mコンターでは詳細が分かりません。もう少し詳しく知りたい。

 そこで、 Google Earth を使って計測してみました。

Google Earthより作成

 これを見ると、北面では、東西方向にほぼ水平であることが分かります。現地でもそのように感じました。

 南面は北面よりも2mから7m程度標高が高くなっています。

 このことから、ピラミッドの1段目は、水平ではないことが分かります。

 これから150mも石を積み上げる大工事の1段目が水平ではないということです。どうなっているのでしょうか。

 不思議ですね。

 これって、施工管理がとてつもなく難しくなります。南北面の最大標高差7mを、石材の高さを調整しながら積むことで水平に近づけていく、という気の遠くなる作業が必要となります。常識では考えられません。しかし、この困難な作業をやり遂げたのです。

ピラミッドの段数を調べる

 調べていくうちに、本来の入り口の段数が気になったので調べてみました。

 

 黄色いラインが30段目です。本来の入り口は、16段目が入り口のベース面になっているようです。

クロスセクションはどうなっているのか

 この部分のクロスセクションはどうなっているのでしょうか。早速作ってみます。

 

 これで、配置がだいぶ分かってきました。

 

今回の発見の意義

 今回発見された空間は、どのような意義があるのか。空間自体は本来の入り口を支える合掌作りの構造の下にできた空間に過ぎません。

 しかし、今回の空間発見の本当の成果は、ピラミッド内部を「透視」する「ミュオン透視装置」の有効性が確認されたことだと思います。

「ミュオン透視装置」はピラミッド内部の空間を見つけるのに有効な方法であることが実証されたのです。 これにより、「ミュオン透視装置」で大回廊上部に確認された巨大空間も実在する可能性が大きくなりました。

 この記事に関心を持たれた方は、過去記事『大ピラミッド建造方法の謎を解明する』も合わせてお読み下さい。