お土産で買ったきわめて少量のコカの葉を学校の授業で生徒で見せただけで懲戒免職など教育委員会の職権乱用なのでは?

 読売新聞が2023年8月8日に配信した「コカ葉を「世界の国々へ理解深めて」と授業で見せる…女性教諭を懲戒免職「違法とは知らず反省」という記事が気になりました。何とも理解不能な記事です。

 今日は、この事件を掘り下げてみたいと思います。

 記事の内容は、小学校の女性教諭が海外旅行で購入し日本に持ち帰ったコカの葉とコカ茶を、教育の一環として、外国の風習を紹介する際に生徒に見せ、「高山病を和らげる薬として用いられている」などと説明したことを知った保護者が騒ぎ、警察に通報、警察は書類送検したが、地検は不起訴にしました、というものです。警察も地検も馬鹿らしくてやってられないからでしょう。

 なぜ、馬鹿らしいか。コカの葉は確かに麻薬のコカインの原料になりますが、コカインを抽出するのに必要なコカの葉が何枚必要か知っていて騒いでいるの? ということです。

 薬物を日本に持ち込むのは確かに違法で、コカの葉やコカ茶を日本に持ち込んむことは明らかに違法です。法律上には、コカの葉何枚までは違法ではない、という基準はなく、持ち込むことが違法になります。

 しかし、現実的な話しとして、コカの葉を1枚持ち込んだら逮捕・起訴するのか、となると別の議論になります。つまり、法律の運用のレベルになります。運用も知らないで法律上違法だと騒ぐ人たちがいます。大抵は、別の目的があって騒いでいる人たちですが。

 そもそも、ボリビアなどではコカの葉は嗜好品として道ばたで普通に売られていて、違法でもなんでもありません。コカの葉とコカインは全くの別物。コカインを精製するには風呂桶一杯のコカの葉が必要になります。コカの葉数枚を見て違法だと騒ぎ立てる親の無知を感じます。

 そんなことを言うのなら、タバコなど危険きわまりないもの。人間を即死させることが可能なニコチンが大量に含まれているのに、誰でもどこでも入手可能です。タバコのニコチンで死ぬ人はいませんが、タバコからニコチンを精製すれば殺傷性が極めて高い殺人ニコチンを作れます。

 ボリビア人から見て日本の報道が変なのは、麻薬の原料=コカの葉、という小学生レベルの短絡的な発想をすることでしょう。紙巻きタバコの葉を噛む人はいないし、そんなものを噛んだら死んでしまう。でも、コカの葉を噛んでも誰も死なない。タバコを規制せず、コカの葉だけを規制する日本の制度が滑稽、と南米人なら感じるでしょう。正に、滑稽なのです。

騒いでいる人たちはコカの葉さえ見たこともないのでしょう。

ボリビアのコカの葉販売。

 警察が小学校教諭の件を知れば薬物の最低量の基準がないから書類送検せざるを得ない。しかし、不起訴になることは百も承知で書類送検。そんなお馬鹿な書類を受け取った検察は、当然、不起訴にします。ほとんど意味のない手続きを形だけやっているだけです。

 と言うことで、この小学校教諭は起訴されなかったのです。それなのに、愛知県教育委員会は、女性教員を懲戒免職処分にします。54歳のベテラン教員を懲戒免職処分にする根拠が管理人には理解できません。

 なぜ、不起訴になった教諭に対して懲戒免職という最も重い処分を下すのか理解できません。職権乱用なのではないでしょうか。

 不起訴とは、この事案は裁判にかけられないと検察が判断したと言うこと。確かにコカの葉を国内に持ち込むことは違法だとしても、余りにも少量すぎて、麻薬取締法違反で裁判するなど馬鹿らしい、と担当者なら感じるでしょう。

 たとえば、南米旅行から帰国し、税関でコカの葉やコカ茶をお土産で買ったけどと申告したら、その人は逮捕されるのでしょうか、それとも、現物が没収されるだけなのでしょうか。

 ネットで探してもこれに関する情報は見つかりませんね。ネットで見つかるのはどこかの弁護士が書いている1年以上10年以下の罰則が科せられますという何の役にも立たない、法律に書いてあることのコピーペ記事ばかり。庶民の関心は、誰でもアクセス可能な単なる法律のコピーペではなく、法律の運用はどうなっているのかを知りたい、と言うこと。弁護士は行政の運用には無知なので答えることができません。

 管理人が推測するところでは、植物防疫に相談すれば、現物没収だけで済むように思います。なぜ、そう思うかというと、お土産のコカの葉で逮捕されたという事例を過去に一度も聞いたことがないからです。

 コカイン抽出など困難な余りにも少量のお土産コカの葉をいちいち摘発、起訴、裁判をしていたら、きりがありません。検察が見せしめにやるケースに遭遇したのなら当事者はお気の毒様、ということでしょう。

 管理人が重視するのは、不起訴になったという事実です。それにもかかわらず、女性教員は懲戒免職になりました。起訴されなかった、つまり、違法だとして裁判にまで至らなかった、別の言い方をすれば、不起訴=無罪、とするのが社会の常識です。不起訴になったのに書類送検されたことをいつまでもぐちぐち報道するマスコミがいたら当事者から訴えられるでしょう。不起訴なのに、勝手に権限外の法律を乱用して犯罪者扱いするのはまさに教育委員会の職権乱用です。

 不起訴の人間を懲戒免職にする根拠は何なのでしょうか。

 本来であれば、マスコミが、この処分はおかしいと指摘すべきだと思います。教育の一環としてよかれと思ってやった授業が原因で懲戒免職。違法だ、という理由は、不起訴になっているのですから通用しません。検察は起訴しなかったのです。起訴するに当たらないあまりにも軽微な違反と捉えるのが正解なのではないでしょうか。

 教育委員会の保身が処分理由なのではと勘ぐりたくなります。

 この女性教諭は、地位保全を裁判に訴えるべきだと思います。悪意のない、何ら実害のないミスを「麻薬」というワードに関連づけて懲戒処分するのは明らかに職権乱用です。生徒に見せたことを問題視するのであれば、現実にどのような問題が発生したのか、その具体的な根拠を示すべきでしょう。

 管理人が問題視するのは、お土産程度のコカの葉を違法違法と騒ぎ立てる姿勢です。ボリビアなどコカの葉を嗜好品として使っている国民を馬鹿にしています。コカの葉=コカイン=麻薬、という思考回路もまるで子供のよう。ボリビア人が聞いたら笑い転げます。

 まあ、そうはいっても、この女性教諭はおバカさんなのは間違いありません。コカの葉やコカ茶を日本に持ち込むなどイカれています。しかし、その部分は不起訴になっているのですから、法律で違法だという話しはできません。不起訴の人間を非難することは人権問題です。

 どのメディアも、ニュースソースを垂れ流しているだけで、この件に関して問題意識すら持っていないようです。コカの葉=麻薬=公務員=無条件で叩けて美味しいニュース素材。この思考回路が見え見えなのがニューストピックスの書き方。悪意しか感じられません。

 メディアは、この話題をいかにセンセーショナルに伝えるかに力を入れているようで、儲けることしか頭にないという報道姿勢に呆れてしまいます。

 最後に、コカの葉の効果について書きたいと思います。管理人が試した限りでは、何の効果も感じません。高山病に効くという話しも全く実感できなかった。5000mの高地で高山病に罹ったときに試したのですが、効果はゼロでした。コカの葉の効果など、所詮、その程度だと言うことです。バスタブ一杯のコカの葉を密輸したのなら話は別ですが、数枚のコカの葉で目くじらを立てる親もどうかしていると感じます。とにかく麻薬は悪い、を連呼したいのでしょうが、ピント外れです。砂糖は健康に悪いと叫んでいる人たちと同じです。法律で禁止されている、と言いたいのでしょうが、その法律では不起訴になっている。法律違反だが犯罪行為とするには余りにも軽微で公判が維持できない、ということなのでしょう。

 道路交通法違反で赤切符ばかりだったら、裁判所はパンクします。違反者のほぼすべての人が青切符を切られ、罰金を納めるだけで裁判にまで至っていません。法律違反をしたのに裁判にまで至らないのです。法律違反なのにこんな運用がされているのです。コカインとは無縁の少量のコカの葉に子供のように反応する親もどうかと思います。日本から出たことがないのでしょうね。

 ベテラン教諭を失うことの(これまでに要した人材育成経費など)コストパフォーマンスを考えれば、教育委員会の判断は余りにもお粗末という印象を受けます。むしろ、教育委員会が矢面に立って、当該教諭を守るような動きをすべきだったのではないかと思います。一所懸命働いている教諭を守るのが教育委員会の本来の職務なのではないかと、改めて感じました。教育委員会の仕事として、「教育委員会及び学校その他の教育機関の職員の任免その他の人事に関すること」があります。教育委員会が懲罰を担当するとはどの法律に書かれているのでしょうか。法律に書く内容なので、どこかの法律に書かれていると思いますが、さて、それはどこ?

 適切な処分は、当該事案は巷の麻薬犯罪とは完全に無関係で、当該教諭はあくまでも教育の一環として実施した行為であるものの少量とは言え違法薬物扱いのものを不法に国内に持ち込んだ行為は処分に値する。しかし、司法判断は不起訴となったことから、教育委員会としては、司法判断を踏まえ、当該教諭に対し停職10日の処分とする、程度が妥当なように思いますが、いかがでしょうか。

 ふと思ったのは、この教諭は、労働組合に加入していなかったのではないか、と言うことです。だから、教育委員会は、簡単に懲戒免職という処分を下した。労働組合に加入していると後が面倒なので懲戒免職まではできない。何となく、そんな構図が見えるのですが、気のせいでしょうか。

 教育委員会の公開資料では、「処分理由 麻薬の所持等」 となっています。検察は起訴しなかったのですから、麻薬の所持等を懲戒免職処分の理由とするのは違和感を覚えます。起訴され、有罪判決が出た時点での処分なら分かりますが、麻薬の所持等を処分理由と記載するのは越権行為ではないでしょうか。教育委員会に「麻薬の所持等」に基づき職員を処分する権限は与えられていません。それは、司法の仕事です。この処分は越権行為ではないかと思います。

 責任を取って、教育委員会職員は全員、懲戒免職処分にするのが妥当かも。