中国の金鉱山での生き埋め事故はどうなったのか世界の誰も関心を示さない不思議

中国の金鉱山で発生した爆発事故で22人の作業員が坑内に取り残されるという事故が発生しました。

 この事故のことを聞いたことのある方はたくさんいると思うのですが、その後、どうなった? について知っている方は皆無でしょう。

 坑内には、少なくとも12人の作業員が生存していることが確認されています。ところが、世界の人々はその救出劇にはまったく関心がないようです。

 世界のメディアが発信している記事を読んでも、何のことなのかさっぱり分からない内容になっています。事故についての記事の中で、この事故ではなく別の事故のことも紹介するような記事は、そもそもこの事故について報道するだけのネタを持っていない、ということが分かります。

 2010年、チリの鉱山で発生した落盤事故で閉じ込められた33人の救出劇を世界が固唾をのんで見守ったのと今回の事故とは、世界の関心がまったく違います。ちなみに、チリの事故では、69日後に全員が救出されるという感動的な結末を迎えました。

 世界がこの中国の事故に関心を示さない理由は、中国人の命の値段が安いと言うことなのでしょうか。それとも中国政府の秘密主義に世界が嫌気を感じているからなのでしょうか。

 たぶん、どちらも違います。世界が関心を示さない理由は、情報が少なすぎるからです。各国のメディアの情報源は新華社通信など中国メディアの情報に頼っています。これでは、情報を発信したくとも情報が偏っていて西側メディアとしては記事にするのに二の足を踏みます。

 まずは、この事故について詳細を整理したいと思います。

金山爆発事故の詳細

 事故は、2021年1月10日午後2時頃(現地時間)発生しました。場所は、山東省の煙台市棲霞の笏山鉱山(笏山金矿)です。

 この鉱山は、金鉱石を採掘するために採鉱準備中で、中国の中では四番目の金埋蔵量を誇っています。

 金山の経営は、趙神鉱業産業有限公司。趙神グループの子会社趙神鉱(Zhaojin Mining Industry Company Limited)と中国の投資会社「復星国際(Fosun Internationa)」が共同で設立した金鉱山会社です。

 ほとんどの日本人は知らないと思いますが、中国は世界最大の産金国です。その四番目の埋蔵量を誇る鉱山で発生したのが今回の事故ということです。

 事故は、坑口から240メートルの「第1中央部」で爆発が発生し、坑口から648メートルのところで作業をしていた抗夫9人、坑口から698メートル離れたところの13人が現場に取り残されました。

 爆発により坑道が破壊され、通信施設や換気・排水・照明施設も使えなくなります。

 その後、坑口より586.8mの第5区画に11人、同637mの第6区画に1人の計12人が生存していることが判明します。

なぜ金山で爆発事故が起きたのか

 この金鉱山は、2012年に地質調査が行われ、2016年11月に3億9,580万元の投資で着工する予定でした。しかし、プロジェクトの開始は2回続けて延期されました。2020年11月3日の市政府の発表によると、2021年10月に生産開始される予定でした。

 事故の原因については、現時点では不明で現在調査中とされています。

 鉱山の事故で爆発を伴うのは、炭鉱での粉じん爆発や可燃性ガスの噴出による爆発などがありますが、今回の事故があった金山では、このような環境にはなく、第1区に保管していた火薬の誤爆の可能性が考えられるようです。

中央政府に事故の報告をせず30時間を無駄にする

 中央政府機関がこの事故の報告を受けたのは、事故発生から30時間後のこと。たぶん、地方政府には情報が挙がっていたのに中央への報告を怠ったようで、市長など党幹部が解任されています。

 地方の責任者の解任という懲罰・罰則の施行が素早いのが中国共産党の特徴です。生き埋めになった人たちを救出するという重要な段階にもかかわらず行政の責任者を解任する中国政府の対応には驚きます。現場の混乱は手に取るように分かります。

救助の状況

 救助作業は、爆発により埋もれた抗井の復旧と並行して、作業員が閉じ込められていると考えられる場所へ地上から新たに削井するという二つの方法が採られているようです。

 17日午後2時前に救助のためのボーリング作業が完了し、同日午後10時過ぎに懐中電灯、栄養剤、薬品、紙やペンなどが坑内に下され始めました。救助隊員の話では、約30分後に誰かが投下用のワイヤロープを引っ張るのが分かったそうです。

 「そして午後11時40分ごろにそれをゆっくりと引き寄せると物資が全てなくなっている代わりに1枚のメモがあることを確認。メモには「坑内にいるのは22人。4人はけがをしていて状況が分からない人が10人います」「全員、体力の消耗が深刻です。胃薬、痛み止め、医療用テープ、消炎薬が至急ほしい。また高血圧の人が3人います。薬が至急必要です。私の車の中にある薬を下ろしてください」「空気の流れがなく、煙の濃度がすごい」という説明とともに、「救助が続けられればわれわれは希望が持てます。どうかよろしくお願いします」というメッセージが記されていた。」1)

 17日午後11時40分ころの出来事です。

 救助用の掘削井は10本掘られているようで、第1井から閉じ込められた坑内の作業員に対し、医薬品や食べ物が届けられると共に、有線での会話も可能となっているようです。第5井の掘削は坑道から7.3mズレてしまい、その修正ができないことから放棄されました。本坑道からの作業は、障害物が多く除去が困難なことから350m付近で止まったままになっています。

 救出作業が難航している原因は、作業員が閉じ込められている場所が坑口から650m(地表面からは深さ350m)とかなり深い場所であること(チリの事故では深さ688mから救出)、岩質が花崗岩のため、固く、ボーリングがなかなか進まないこと、本坑の異物除去は、吸排気配管、電気ケーブルなどが複雑に絡み合って堆積しているため、作業を困難にしている。

救援プロセス
1月10日14時

山東省煙台市栖霞市笏山金鉱で爆発事故が発生し、作業員22人が坑内に閉じ込められ、連絡が途絶えた。

1月11日20時

棲霞市の笏山金鉱山は棲霞市の緊急事態管理部門に報告しました。この時、事故発生から30時間が経過していました。

1月12日

緊急事態管理部の黄明党委員会書記は、本部指揮センターの連続線事故現場で、全力をあげて救援処置を行うとともに、作業チーム、専門家、救援チームを現場に派遣しました。

1月16日正午

事故現場にはすでに439人の救援員、357台の各種設備が救援に参加しています。

1月17日13時56分ごろ

3号井ドリルが地下坑道に届く。

1月17日22時

救援員が地下に補給し、下の方にロープを引っ張りました。その夜、救援要員は井戸の底からのメモを受け取りました。

1月18日午前5時

深さ628.82メートルの第1ボアホールが貫通。
救援要員が栄養剤などを井戸から地下に送った。ロープにかけた栄養剤と薬品は全部取り出されていました。

1月19日

救助隊は再び地下から「バックアップとして別の電話を送ってくれてありがとう。連絡が取れなければ我々を見つけられない」というメモを受け取った。

1月20日

井戸のクリアランスのための2階建てのサスペンションプレートは、350メートルの深さからブロックポイントに到達。

1月21日正午

本坑の異物除去は、358mまで進捗

本坑からのアタック

 坑口から350メートルから446メートルまで、厚さ約100メートルの深刻な閉塞があり、障害物は約1,300立方メートル、重量70トンです。21日正午時点で、清掃を終えたのは358m地点まで。作業完了までは15日かそれ以上の時間が必要となっています。

この事故について世界の関心が薄いのはメディアの意図的なもの?

 チリの落盤事故の時と比較して、この事故に対する世界のメディアの反応があまりにも鈍いのが気になります。

 たぶん、現地では報道管制が敷かれていて、海外メディアは現地に入ることができないのでしょう。中国政府としては、救出に成功すれば大々的に自国の技術力を宣伝する。もし、救出に失敗すれば、現場はすぐに埋めてしまい、事故など無かったことにする。これに批判するメディア・国に対しては、「内政干渉だ」と主張する。このような中国政府のおきまりのスタンスを誰もが予想できます。中国の報道は、何百人現地に派遣した、など本筋から逸れた報道が目立ちます。チリの事故の時のような救助活動の詳細がリアルタイムで報道されるのとは異なり、まるで戦時下の「大本営発表」のように感じます。

 このような状況では、世界のメディアは、正しい情報の発信は無理!と判断しているのでしょう。閲覧者数向上に熱心な日本のメディアでさえ、この事故については沈黙しています。

 中国共産党。なんら正当性を持たない一部の人たちが国のすべてを牛耳っている現状に疑問を感じる中国人たちもいるのでしょう。でも、そんなことを言うと警察に捕まり財産没収。まるで、江戸時代の悪代官と重なります。

 この事故が、期せずして、中国という国の世界における位置づけを示しているように感じます。中国政府が「内政干渉」という言葉を使えば使うほど、世界の信用を失っているように感じます。本来、「内政干渉」という言葉は、外部の批判に抗弁するために独裁者が好んで使う用語で、まっとうな国は使うはずもありません。

 チリの救出劇の時のような世界が固唾をのんで見守った事例と今回の事故とはまったく異なった様相を呈しています。

 内政干渉だと主張してメディアを拒む国に対して、世界が”NO”を突きつけているのが今回の事故のように感じます。日本の報道など二日遅れの配信。まったく危機感も臨場感もありません。

 しかし、地下に閉じ込められている方々が無事に救出されることを願う気持ちは世界共通でしょう。管理人も心から無事救出されることを祈ります。

11人無事救出

 AFPが、24日、11人が救出されたと、国営の中国中央テレビ(CCTV)が伝えたとの記事を配信しました。「午前11時過ぎに「四中段」と呼ばれる坑道から作業員1人を救出すると、午後3時過ぎには「五中段」坑道に残された10人の救出も完了し、これまでに確認された生存者11人全員が地上に生還した」、とのこと。

 無事に救出されたようで何よりです。安心しました。

 しかし、この事故の救出状況をずっとモニターしていた管理人にとって、このニュースは寝耳に水です。前日までそれほど進捗しているようなニュースはなかったのに、24日になって急に救出完了。なんか変です。

 11人が閉じ込められていたのは坑口から586.8mの第5区画(「五中段」)。この深さまで貫通している井戸は3号井と4号井の二本だけです。ニュースでは排水穴から機器を取り去り、そこから救出したように書かれています。すると、排水に使われていた4号井から救出したことになります。

 このニュースって本当なのでしょうか。助け出された人の髭が伸びていないように見えるし。2週間も閉じ込められていたのに、お顔がキレイすぎるし。4号井で救出できるのならなぜ(4号井が貫通した)17日か18日に救出しなかったのか不思議です。

 もし、救出が真実だとしたら、うれしいことですが、ずっとフォローしていた管理人としては、救出劇の演出のようにも思えます。なぜ、メディアも知らないうちに急に救出することになったのか。今までの報道は何だったのか。とても疑問に感じます。

 前日には、15日程度かかると見られた本坑の清掃が急激に進行したのが原因のようです。清掃していたら、障害物が落下して、急にぽっかり空洞ができたために救出が進んだようです。ということは、4号井からの救出ではなく、本坑から救出したことになります。

 動画を観ると井戸から救出されたように見えたのですが、違うようです。

 通常であれば、遭難者の氏名や家族の映像などありそうですが、それが一切、報道されないところが、今回の救出劇。替え玉じゃないの?

 意識不明の人が二人いて、一人は死亡したようです。最初に救出された人がもう一人の重症者のようですが、意識はあるようです。髭が伸びていないのは他の救助された人と同じ。

 中国の坑夫って素敵な環境で作業をしているようです。薄汚れた衣服、身体ではなく、まるで、さっきまで地上にいた人のように着ている服には汚れがなく、手や顔はキレイです。えっ、どこから救出されたの? と思えるほど。

 何となく、想像したとおりの結果になったように思います。

「奇跡の救出」も取材規制、中国 金鉱爆発事故、記者を妨害

 2021年1月27日、日本の各メディアが「「奇跡の救出」も取材規制、中国 金鉱爆発事故、記者を妨害」というニュースを一斉に流しています。

 やはり、取材規制があり、現地の情報は隠蔽されているようです。 

 生還した作業員を取材しようと病院を訪れていた女性記者が警備員に押し倒され、靱帯損傷の大けがを負います。

 救出劇の詳細が取材されると困る人たちがいるのでしょう。

さらに15日以上かかると発表された翌日に救出された10人。それが本当に地下に取り残された作業員たちだったのかは、誰も知らないという恐るべき謎。救助された人の氏名も家族も一切公表されていません。

 女性記者が怪我した時の動画がYouTubeにアップされています。どうせ削除されてしまうのでしょうけど。見るなら今しかありません。

 ”女记者采访山东栖霞矿难被阻拦受伤 悲愤大喊:“你们还是警察吗”

 この救出劇がフェイクだったとバレてしまうと、関係者は全員銃殺刑かも。

 西側メディアがこの事故についてあまり報道しないのが良いことなのか疑問に感じます。

 救出されたのは、本当に地下に取り残された作業員ですか。
 仲間の作業員に聞けば直ぐに分かることです。しかし、そのような情報が出てくることはないでしょう。

事故現場は国防大臣のお膝元

 中国の国防部部長(国防大臣)は、魏鳳和というお名前です。出身は山東省。今回の事故現場とはかなり近いと感じます。利権が絡む金山開発。中国共産党が報道規制をしてまで事故の詳細を報じず、早期の幕引き・金鉱山の再開をもくろむ背景には、膨大な利権が絡んでいるのかも知れません。

 

そして、事故のことなど忘れられた|情報遮断

 事故から1年半ほど経った2022年9月10日に、事故のその後の状況を確認しようとGoogle検索すると、事故の情報がきれいに無くなっています。微博では1件もヒットしません。Baiduでは、外国からのアクセスは遮断されます。

 この事故のことを知っているのは限られた人だけになってしまいました。何とも恐ろしい限りです。

出典
1) 「【動画】鉱山事故で閉じ込められた作業員がメモ記す、「救助が続けば希望持てる」―中国」、Record China、2021年1月18日(月) 14時0分  

Rescuers talk with trapped miners
Rescuers were able to make contact after a communication device was passed down to the trapped miners, the rescue headqu...
Rescuers talk with trapped miners
Rescuers were able to make contact after a communication device was passed down to the trapped miners, the rescue headqu...
http://www.aqsc.cn/news/202101/21/c139520.html

Wikipedia, https://zh.wikipedia.org/wiki/2021%E5%B9%B4%E5%B1%B1%E4%B8%9C%E6%A0%96%E9%9C%9E%E7%AC%8F%E5%B1%B1%E9%87%91%E7%9F%BF%E7%88%86%E7%82%B8%E4%BA%8B%E6%95%85